こんにちは。エムスリーエンジニアリンググループ執行役員*1兼VPoE兼プロダクトマネージャーの山崎です。
本ブログはエムスリー Advent Calendar 2019の25日目の記事です。
エムスリー Advent Calendar 2019の締めとして何を書こうか色々と迷ったのですが、今回はVPoEらしく、「VPoEとしてこの2年間を振り返って」と第して2019年を締めくくりたいと思います*2。
はじめに
2017年12月にエムスリーにおいて始めてVPoEが設置され、私が初代VPoEに就任しました。 それからの2年間は本当にあっという間に過ぎ、2年も経っているとは信じられないというのが正直なところです。 一方で、その間、多数のチャレンジをしてきました。
この記事では、社内外の参考になるかもしれないと思い、それらのチャレンジを抜粋して紹介したいと思います。 ちなみに、評価制度と報酬に関するチャレンジはセンシティブなので割愛します*3。
書籍の紹介
2年間に渡るチャレンジをするにあたって、ロナルド・A・ハイフェッツの最難関のリーダーシップが非常に参考になったので、オススメします。
技術的問題(テクニカル・プロブレム)と適応課題(アダプティブ・チャレンジ:適用を要する課題とも)を区別する点と、本当に達成したい目的のために「バルコニーに上がって実際に何が起こっているか冷静に観察し、診断してから、大切なものを失うリスクがあっても自らを適応させる行動をとって、再度、バルコニーに上がって実際に何が起こっているのか観察する」という手法を、VPoE就任する直前に読んだのは非常にラッキーだったと思っています。
ロナルド・A・ハイフェッツ氏の考えはNHKの「リーダーシップ白熱教室」でも放送されているので、そちらでご存じの方も多いかもしれません。
- 作者:ロナルド・A・ハイフェッツ,マーティ・リンスキー,アレクサンダー・グラショウ
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2017/09/06
- メディア: 単行本
2年間の主なタイムライン
- 2017/12 VPoE設立、就任
- 2018/1 2018年度体制変更準備
- 2018/4 2018年度体制変更実施、採用チーム再編成、セキュリティチーム設立、業務執行役員就任
- 2018/5 M3USA支援第1弾
- 2018/6 初代CTOがM3USAへ移籍、経営会議参加を引き継ぎ
- 2018/7 技術顧問開始
- 2018/10 M3USA支援第2弾
- 2019/1 2019年度体制変更準備
- 2019/4 2019年度体制変更実施、2代目CTOアサイン、グローバルチーム、プロダクト支援チーム設立
- 2019/9 M3USA支援第3弾
- 2019/11 執行役員就任
- 2019/12 丸2年経過
以下、時系列順ではなく、各種チャレンジをカテゴリごとにまとめてお届けします。
社内外でのエンジニアリングGの立ち位置を確立
経営陣が納得する目標設定
まずはじめに、経営陣が納得するエンジニアリングGの新たな目標を設定することを目指しました。
というのも、エムスリーのようなITカンパニーであれば、経営陣にエンジニアリングが重要である点は理解してもらえていますが、どのくらい重要なのか、という観点で見た際に、全社目標を達成するためにもっとも重要な部門の1つ、というところまで納得してもらう必要があると考えたためです。
具体的には、エンジニアリングの力を活用して2017年度末の営業利益2倍を3年で目指す、その為にエンジニアを2倍(当時60名から120名へ拡大)にし、生産性も2倍にする、という大きな目標を経営陣に宣言しました。 かなりのストレッチ目標ですが、それでもこの目標があるため、全ての意思決定に骨子が生まれ、日々、目標に向かって前進していると感じます*4。
VPoEが率先して事業にコミット
経営陣とエンジニアリングGをつなぐ接点として、私が自ら率先して事業にコミットしてきました。
具体的にはエムスリーでは以前からエンジニアリングGの目標に事業目標をセットする文化があったので、それを推進しつつ、その為に技術的なチャレンジとして何ができるかを追求しています。 事業サイドで展開されているROIの文化を、エンジニアリングGのマネジメントチームの仲間の手を借りて、エンジニアにもわかるように長期的な利益で算出して、インパクトが大きい仕事を成し遂げるように推進しています。 また、機関投資家の前で、エムスリーのエンジニアリングのスタイルや成果を自ら説明するなども行っています*5。
エンジニアリングGのメンバー、一人ひとりが事業にコミット
結果として、エンジニアリングGのメンバー、一人ひとりが事業にコミットする文化が少しづつ広がっています。
日本、世界の医療を前進させるようなインパクトのあるプロダクトを創る。 その掛け声とともに、各チームのメンバー全員が、インパクトとその対価をより意識しながら仕事をしてくれています。
採用を強化
アトラクト強化
採用強化については、まずアトラクトを強化して、辞退率を減らすとともに、承諾率を改善しました。
具体的にはカジュアル面談で話す内容と、アトラクトしながらジャッジする方法を面接官で研究し、皆で共有しました*6。
今ではまだまだ改善点もあるものの、カジュアル面談では真摯に相手の聞きたいことを話しつつお互いマッチしそうであれば応募してもらう、1次面接ではアトラクトしつつギークさを見極め、2次面接ではアトラクトしつつ、ギークさ、スマートさ、カルチャーフィットを見極め、3次面接ではスマートさとカルチャーフィットを見極めるという流れが上手く出来ているように感じます。 当初に比べると実際の辞退率、承諾率も大きく改善しました。
マーケティング強化
2年前はエムスリーは知る人ぞ知るIT企業、という感じで、ほとんどの方がエージェントから聞いて初めて知った、というような状況でした。
2018年4月にマーケティングが得意な西場が採用チームリーダーに就任し、彼を中心とした採用チームとエンジニアリングGのメンバー全員によって、このテックブログや、勉強会、イベントスポンサー、TwitterやFacebookを活用した採用マーケティングが本格的に始まりました。 技術顧問の藤原さんにも大変お世話になりました。
その結果、2年たった今では、Web業界の多くのエンジニアに知られるようになりました。本当に信じられない結果です。
CX強化
友永率いるエンジニア担当人事チームは、CX(Candidate Experience:候補者体験)の最大化をミッションに、採用拡大に伴うオペレーションの増大に対応しつつも、候補者一人ひとりにカスタマイズした対応を行ってくれています。
応募者数は当初の数倍になっているのに、辞退率、承諾率ともに向上しているのは彼女たちの成果が大きいのは間違いありません。 このような活躍は見過ごされがちだと思いますので、この場で皆を代表して感謝の意を表したい気持ちでいっぱいです。
全員採用の推進
上にも少し書きましたが、現在エンジニアリングGでは全員採用という掛け声の下に、まさにメンバー全員に何らかの形で採用に貢献してもらえるように訴えています。
それぞれ得意不得意がありますので、ブログを書く人、勉強会で登壇する人、勉強会で知り合った知人を紹介してくれる人、Twitterでスカウトする人、イベントスポンサーでブース対応する人、OSSで頑張る人など、それぞれが貢献できる範囲で貢献してもらい、エンジニアリングGをプレゼンスしてもらっています。
月1回のエンジニアリングG全体のミーティングでは、採用の進捗を共有し、みんなで拍手し、互いの貢献を認め合う場を作りました。
チーム化の推進
全てのチームに原則チームリーダーをアサイン
2017年12月の段階では、エンジニアリングGの中に複数いるグループリーダーがチームリーダーを兼任しているチームも多かったのですが、2018年4月の体制変更をきっかけに、原則、個別にチームリーダーを立てるようにしました。
これによって、チームリーダーらしさがチームに反映されるようになり、各チームの改善が早く進むようになったと思います。 また、チームリーダーが集まるミーティングも同時に開催されるようになり、グループリーダー中心のマネジメントからチームリーダー中心のマネジメントにシフトするきっかけになりました。
詳細は以前に紹介したこちらの記事をご覧ください。
Next ◯◯の実施
各チームで、チームリーダー、担当グループリーダー、VPoEの私が集まるNext ◯◯(◯◯にはチーム名が入る)を実施しました。
このミーティングでは、直近の困っていることはさておき、1年後にチームがどのような状況になっていたいのか、どのようなチャレンジに遭遇しているのか、ざっくばらんに視座をあげて語るミーティングです。 最初は私の考えている世界を見てもらうために始めたミーティングなのですが、みんなで1年後を語ると、むしろなるほどと私のほうが驚かされることの連続で、毎回ワクワクするような会議になっています。
当初はいくつかのチームで実験的に始めた取り組みですが、現在では原則全チーム実施で運用しています。
2代目CTOのアサイン
最後に触れておきたいのが2019年4月に実施した2代目CTOのアサインです。
結論から言うと、これを語らずしてVPoEの振り返りはありえないというくらい重要だったと認識しています。 というのも、2018年6月から2019年3月までの間はCTO不在だったのですが、そもそもVPoEはCTOが居てこそ機能する仕組みなので、CTOをアサインすることによって技術的問題は彼に任せることができ、それ以降、VPoEである私は本来取り組むべき業務に集中できるようになりました。
一般的にはVPoEの説明として、CTOにCTOらしい仕事をしてもらうためのVPoEという説明がされると思うのですが、VPoEにVPoEらしい仕事をしてもらうためのCTO、という説明も同時に成り立つことを実感しました。
まとめ
思いの外、長文になりましたね。
エムスリー Advent Calendar 2019の締めとして何を書こうか色々と迷ったのですが、今回はVPoEらしく、「VPoEとしてこの2年間を振り返って」と第して2019年を締めくくりました。
具体的にはこの2年間を振り返り、多くのチャレンジから、社内外でのエンジニアリングGの立ち位置を確立し、採用を強化し、チーム化の推進をしたことを抜粋してお伝えしました。
12/24の21時過ぎから執筆し始めたこともあり、全てのチャレンジに触れることは出来なかったのが残念ですが、社内外で少しでも参考になれば幸いです*7。
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