エムスリーテックブログ

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【Sansan 藤倉成太×エムスリー 山崎聡】「二者択一の考え方はエンジニアのキャリアを先細りさせるだけ」(エンジニア type 対談後記)

エムスリーエンジニアリングGでVPoEをやっている山崎です。

先日、Sansan株式会社CTOの藤倉さんとエンジニアのキャリアについて対談させて頂きました。対談中に感じたことや、対談を振り返ってみて改めて感じたことについて書いてみたいと思います。

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きっかけ

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先日の対談にて

藤倉さんとの出会いは、2017年12月にエムスリーの初代VPoEに就任した後、改めて他社のCTOやVPoEについて学んでいた頃にCTOミートアップでお見かけしたのが最初だったと思います。その後、機械学習関連の勉強会などでSansanさんとご一緒する機会も増え、藤倉さんと別のイベントでご一緒することもあり、ビジネス領域の課題を解決する同志として意気投合したのが今回のイベントのきっかけとなりました。

「現場」か「マネジャー」か、という議論を振り返って

これは採用活動でエンジニアのキャリア相談に乗っていると、本当によく耳にする悩みです。考えの多くは対談中に触れたとおりですが、このような二者択一の考えになってしまう原因の一つは、日本のソフトウェア産業における「現場」と「マネージャー」の報酬格差にあるのではないか、というのが、対談で触れなかった考えです。

というのも、1980年代のマイコン黎明期から始まり1990年代を経てWeb関連のビジネスが一般的になる前の2000年頃までの日本のビジネス向けのソフトウェア産業は、どちらかといえばメーカー製品にバンドルされるようなパッケージソフトウェアや、何十人何百人で作り上げる大型のソフトウェアプロジェクトなどが主流だったため、ソフトウェアを発注する側と受託する側の切れ目が比較的明確で、その中でソフトウェアを作り上げる作業もマネージャーが指示を出し、現場のエンジニアが構築するという比較的トップダウンな開発が主流だったと思います。

その結果、典型的なSI構造、つまり基本的には(一部のスーパープログラマーを除いて)マネージャーのほうが報酬が高く、現場のエンジニアが報酬が上がりにくいという構造が出来上がりました。そのような環境の中では、対談中に触れた「やりたいこと」を続けようとしても、ライフステージの変化とともに、そろそろ現場から離れてマネージャーに上がらなくては…と考えてしまうという強い力学が働くのもある意味仕方ないと思います。

報酬格差を解決するための3つの選択肢

二者択一の考え方も含め、解決策は3つあると思います。

1つ目は、報酬を諦めてその構造の中でやりたいことを追求すること。私はこれはこれで正解だと思います。エンジニアはソフトウェアを書くのが大の楽しみ。自分の能力も上がるし、新しい技術を身につけることもできる。そんななかで自分が目指していたエンジニアになれる可能性も高いと思うからです。

2つ目は、やりたいことを諦めてその構造の中でマネージャーを目指すということ。これもまたこれで正解だと思います。というのも、マネージャーというのは食わず嫌いの性格があり、やってみたら実は楽しい、現場のエンジニアの力を引き出して目標を達成する醍醐味は他では味わえず、やっていたら好きになっていた、というケースもあり得るからです。

3つ目は、環境を変えて、やりたいことをやりつつ、報酬も獲得していくパターンです。2000年以降、日本でも現場のエンジニアが活躍できる事業会社が増えています。そのような一部の事業会社では、必ずしもマネージャー優位の報酬体系を採用していないため、エンジニアがイキイキと働いているケースが多いように見受けられます。実際に、エムスリーでもエンジニアの報酬制度にグレード制などは導入しておらず、すべてのエンジニアがアウトプットに応じて報酬を得るいわばプロ野球的な報酬制度になっており、エンジニアでも十分に報酬を得られる仕組みになっています(エンジニアには自らの技術でインパクトのあるプロダクトを生み出すことを期待しており、評価にもその考えを反映しています)。

「技術と事業貢献の2軸でキャリアを考え、できることを増やせ」

紙面に戻りましょう。紙面では30代を目前にした時、今後のキャリアについて悩んだことはあるか、という質問から始まりエンジニアとしてどうキャリアを考えていくべきか、という議論をしています。この問題も議論を振り返ってみると「やりたいことをやり続けることによって満足できる技術や報酬を得るにはどうしたらよいか」というシンプルな問題に置き換えられます。いくつか方向性があると思いますが、私は以下の3つの条件を満たす環境に身を置くことが重要だと思います。

1つ目は、十分収益の上がる業界を選ぶこと。報酬は利益の分配の一部なので、そもそも利益が出にくい斜陽産業だと、利益の多くを上から分配していくケースが多く、マネージャーまでは届いても、現場のエンジニアが十分な報酬を得るのは難しくなります。

2つ目は、技術が業界の生産性にとって重要な鍵となっていること。例えばSansanさんのように名刺から関係性を抽出することによって新しい価値を創造して圧倒的な営業生産性を生み出す可能性であるとか、訪問ベースの製薬マーケティングをインターネット上で展開して圧倒的な効率性を生み出す可能性であるとか、そういったポテンシャルがあるかどうかです。

3つ目は、その中でエンジニアが評価される文化になっていること。代表取締役を始めとする経営陣が、技術が業界の生産性向上にとって重要な鍵となっていることを理解した上で、エンジニア一人ひとりのアウトプットがその基盤になっていると理解してくれているかが重要です。

「20代は“チャレンジ癖”を付けて戦うための手札を増やし、強化する時期」

これらの条件を満たす環境に身を置いた上で、エンジニアも努力しなくてはなりません。なぜならば、そのような組織に身を置き技術的な成長もしながら満足できる報酬を得るためには、大原則として、経営陣の期待に応える十分な利益をもたらさなければならない責任も発生するからです。

つまり、紙面で触れたように、事業を前にすすめるために「技術と事業貢献の2軸でキャリアを考え、できることを増やす」こと。そのために「20代は“チャレンジ癖”を付けて戦うための手札を増やし、強化する」ことが重要です。

そのために私が最も重要だと思うのは「勇気」だと思います。個人的にはエンジニアのキャリアパスについて実はロールプレイングゲームに似ている気がしており、多くの人が勇気を持っていないために最初の街やスタート地点付近で自分のできることで戦っている。その気持もわからなくはないのですが、一流のエンジニアを目指すなら、最初は到底魔王など倒せるレベルではなかったとしても、その旅の途中でレベルアップできることを信じて、最初の街を出発する勇気をすべてのエンジニアに持ってもらいたいと言うのが私の意見です。

まとめ

今回、Sansan株式会社CTOの藤倉さんとエンジニアのキャリアについて対談を振り返り、今回のテーマである「二者択一の考え方はエンジニアのキャリアを先細りさせるだけ」というのは、結局は二者択一のルールの上に乗るのではなく、勇気を持って色々なチャレンジを重ね、エンジニアとして自分自身をレベルアップさせることで、今まで見えなかった新しい世界が見えてくる、ということなのかな、と感じました。

記事を読まれた20代、30代のエンジニアの皆様にとって少しでも参考になればと思います。

さて、今回の対談及び対談後記についてさらに詳しく質問できるイベントを開催する事になりました。特に対談記事やこの記事を読んでSansanやエムスリーの事業に興味を持った方は是非ご参加ください。

sansan.connpass.com

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