こんにちは、CTO の矢崎(id:Saiya)です。
先日、Google Cloud Next '19 in Tokyo とその中で開催される Leaders Circle という会に参加してきました。
イベント全体の内容などは 公式サイト をご覧いただくとして、ここでは私個人の主観として印象に残った点や、エンジニア・アーキテクト観点での気になりどころなどをご紹介いたします。
Kubernetes と オンプレミスからの移行
個人的には、今回の Cloud Next では以下の 2 つのトピックが多く語られていた印象があります:
- Kubernetes の活用や実戦投入
- オンプレミスの既存システムの移行
Kubernetes
今回の Cloud Next では、信頼性の要求やロジックの複雑性が高いシステムにおける Kubernetes の導入事例や、そういったユースケースを支援するための Anthos に代表される GCP のサービスの紹介が多々ありました。 Kubernetes が次世代のクラウドプラットフォームの基盤としてキャズムを超えつつある ことの傍証でもあるように思われます。
個人的にも、Istio, Spinnaker, Knative といった注目している技術の多くが Kubernetes 前提(ないしは Kubernetes が主要な利用環境)であり、Kubernetes の必要性が年々高まっているように思われます。フレームワークやプラットフォーマーの API 設計に携わってきた身として、Kubernetes コア部分の API やモデルの設計はよく練られている上に拡張性に優れていると常々感じており、エコシステムの基盤として活用されていることへの納得感もあります。
いくつかのセッションで GKE *1 を利用されている各社の事例共有がありましたが、工夫やハマりどころの具体的なノウハウが多々共有されていた点も印象的でした。ここで詳細を転記することは控えますが、それらのノウハウは GKE に限らず Kubernetes 一般の活用の知見としても有用なもので大変参考になりました。弊社としても様々な形での情報共有をこれからもやってゆきたいと存じます。
Kubernetes とセットで使う DB どうするか問題
また、Kubernetes に限らずモダンなシステムを構築する上で、データベースやストレージの選定は注目すべきトピックであると感じました。
分散システムにおける DB *2 の実装・運用は非常に厳しいものなので、クラウドベンダーによるマネージドな DB はほとんどの企業にとって必須の存在になりつつあります。
しかし GCP の中だけでも非常に多くの DB・ストレージのソリューション*3があり、どれを使うべきか・どう使うべきかは「都度、悩みながら柔軟に検討する」というのが実情のように思われました。この点については今現在はアーキテクト・エンジニア の腕の見せ所ですが、技術の進化や収斂によって将来には状況が変わっていく分野なのかもしれません *4。
オンプレミスの既存システムの移行
今回、オンプレミス環境内でシステムを modernize してからクラウド環境に移行するという方向性が GCP として提案されていたのが印象的でした。オンプレミスにいながらにして GCP のサービスの恩恵を受けるために GKE On-Prem で GCP managed な Kubernetes をオンプレ環境上で動かし、そして Anthos によってオンプレとクラウドを透過的に扱うことで段階的なクラウドへのシフトも可能にする、というシナリオが GCP から示されたのは興味深い話です。
レガシーなシステムの保守運用という課題が業界全体としてある中で、一定以上の歴史のあるサービス・企業としてはこういった動きは意識しておく価値があるのではないでしょうか *5。
なお、今回のイベントではあまり語られていなかったようにも感じましたが、"クラウドで動いているが Kubernetes や Docker ベースではないシステム" をどうしてゆくかという課題も個人的には気になっています。この点は比較的新しい web 企業でも課題になっていくような気がしています。
Leaders Circle
Google Cloud 利用企業のリーダー層向けに Cloud Next 内で開催されるサブ・イベントとして Leaders Circle というものがあり、今回そちらにも参加させていただきました。
Leaders Circle には各社の CxO (CTO, CIO など) 相当の方が参加されており、そういった方向けの基調講演および懇親・情報交換ディナーの場でした。私は初参加だったのですが、歴史も長く*6誰もが名前を知っている一般消費者向けの事業会社の方が非常に多く来られていることが印象的でした。世の中の多くの方の生活に密着するサービスを提供する企業の方が多く来られている点はクラウドのプラットフォームが幅広いユーザーに受け入れられていることも示していると思います。
また、GCP の US 本社の方も来日されていたので、そういった方と直接の会話をしたい方にも良い機会であったのではないでしょうか。
ユーザー企業のバリエーションが非常に広くなっていく状況下でクラウドベンダーが今後どのようにプラットフォームを展開していくのか、そしてそういったプラットフォームとビジネスの間で web エンジニアはどのような価値を出していくのか、といった点を個人的には考えされられる会でした。
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弊社では GKE / Kubernetes も含むさまざまなコンピューティング技術を適正に利用することで、医療に関わる人に貢献することを日夜目指しております。Kubernetes 等の技術にご興味のある方もそうでない方も、以下の URL 等からぜひお気軽にコンタクトいただけますと幸いです。