この記事はエムスリーAdvent Calendar 2024の19日目の記事です。
こんにちは。エンジニアリンググループ プロダクト支援チームでプロダクトマネージャーをしている中村です。私は現在、医師向けのライブ動画配信サービスである「Web講演会」というプロダクトにプロダクトマネージャーとして携わっています。今回の記事では、Web講演会のグロースに取り組む中での学びをご紹介します。
- はじめに
- 「知らないこと」を認識する
- 「知らないこと」を知るためにやったこと
- フォーカスする(まずはみかんの売上を2倍に伸ばす)
- まとめ:プロダクトマネージャーは自信と謙虚さのバランスが大事
- We are hiring!!
はじめに
突然ですが、先日開催されたpmconf2024は参加されましたでしょうか。
私は1日目にオンラインで参加しました。どのセッションも非常に見応えがあり勉強になったのですが、中でも印象に残ったのが曽根原さんのセッションでした。
その中で語られていた「プロダクトのインパクトは自分達の意思決定レベル以上に上ブレすることはない」というメッセージが胸に突き刺さっています。
というのも、先日Web講演会について取締役CTO兼VPoPの山崎と合宿(という名のMTG)を行ったのですが、そこでの学びが先の「プロダクトのインパクトは自分達の意思決定レベル以上に上ブレすることはない」というメッセージと重なったからです。具体的には、意思決定のレベルをあげるためには売上構造の解像度を上げる必要がある、ということを学びました。
ちなみにエムスリーのプロダクトマネージャーが実施する「合宿」については次の記事でご紹介しておりますので、よろしければご覧ください。www.m3tech.blog
ここで、プロダクトマネージャーであれば担当プロダクトの売上構造は理解していて当然のことだと思われるのではないでしょうか。当然高いレベルで理解されているプロダクトマネージャーもいらっしゃると思います。ただ、もしかすると「知ってるつもり」の罠にはまっているケースもあるかもしれません。
「知らないこと」を認識する
合宿ではまず山崎からWeb講演会の売上構造やKPIについて質問を受け、実際のKPI管理表を出してKPIの説明をしていきました。私は担当プロダクトマネージャーとして当然説明できると思っていました(何なら合宿で説明できるよう事前準備も入念にしていました)。もちろん答えられることもありましたが、答えられないこともありました。たとえば売上がどのように成立しているかをKPI分解して説明することはできても、いつ、何を、どのように売れば利益が増えるのかという点で答えられないことがありました。
このことで、自分が「知ってるつもり」になっており、実は把握できていない部分があるということに気が付きました。
ちなみにこれだけ書くと、プロダクトマネージャーとしてただ事業理解が甘かったことを指摘されたように見えるかもしれませんが、そうではなく「知らないこと」がまだあると気づけたことが合宿の成果物となりました。合宿の最後に山崎からは「知らないことがまだあると分かって良かったですね」という非常にポジティブな言葉をもらい、自分の知識の外側にあるものを明らかにしていき、どうしたら売上を増やせるのかを解き明かしていく取り組みに対し、非常に前向きな気持になれました。
ちなみに次の本が、この「知ってるつもり」現象について書かれており、面白かったです。
また、自らの考えを疑い、思い込みを手放すことについては次の本にも詳しく記載されています。
「知らないこと」を知るためにやったこと
今回分かった「知らないこと」について合宿の中で立てた仮説を検証するために、社内の関係者に話を聞きに行き、ファクトを収集しました。
たとえば、八百屋の売上の場合、購入者数×客単価と分解できます*1が、その解像度は関係者へのインタビューの前後で大きく異なりました。
- Before:「売上=購入者数×客単価」を単なる数式としてとらえ、購入者を増やす方法、客単価を上げる方法、とふんわりと考えている状態
- After:旬のみかんなら利益率が高く仕入れを増やすことも可能だからもっと売って欲しい。というように、いつ、何を、どのように売れば利益が増えるかを理解している状態
※上記はあくまで例です。
フォーカスする(まずはみかんの売上を2倍に伸ばす)
上記のステップでみかんを売れば利益が増えるということが分かったため、みかんの売上を2倍にする方法を考えます。ここでのポイントは、八百屋全体の売上のことは一旦置いておき、徹底してみかんの売上を2倍にすることにフォーカスすることです。
なぜ、全体の売上でなくみかんの売上を2倍にしたいのかというと、みかんの売上が2倍にできないならば八百屋全体の売上を2倍にはできないからです。実際に、横展開のことは一旦考えずに特定の案件にフォーカスすることで、全体のKPIを伸ばそうとしていたときには出てこなかったアイデアが次々と出てきました。現在はそれらのアイデアをインパクトの大きいものから順に実施し効果を検証しています。ちなみにこの話は「八百屋理論」として次の記事で詳しく解説されています。logmi.jp
八百屋の売上を上げるためにみかんをもっと売って欲しい、ということに気づかなければみかんの売上を2倍にするというアプローチには結びつきませんでした。ここでは八百屋を例に語りましたが、実際のプロダクトマネジメントにおいても同様です。
まとめ:プロダクトマネージャーは自信と謙虚さのバランスが大事
今回の記事では、事業をグロースさせるためには売上構造の解像度を上げる必要があり、その解像度が施策の精度を左右するということを書きました。 特に、自分が事業のことを分かっているという思い込みをいかに捨てられるか、常に自分が知らないことは何かを自問自答し、売上構造の解像度を高めていけるか、ということの重要性と難しさを学びました。
このことについて、次の記事ではプロダクトマネージャーに必要な「謙虚さ」として語られていますので、最後にご紹介します。 logmi.jp
山崎:「これはうまくいくと思っている。けれどもそうでないかもしれない。もっと良い方法があるかもしれない。」「自分はこれで成長できると思っている。だけどもっと良いアドバイスがもらえるかもしれない」と、やはり常に自信と謙虚さのバランスは持っておくのがいいですね。一流プロダクトマネージャーは必ず持っています。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
We are hiring!!
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*1:突然八百屋が出てくるのは、アナロジーをしばしば活用するエムスリーのプロダクト支援チームの特徴でもありますのでご笑覧くださいw