エムスリーエンジニアリンググループ AI・機械学習チームの丸尾です。
エムスリーには今年エンジニアとして新卒入社したのですが、いつの間にかジャーニーマップというものを書いていました。自分でもびっくりです。
AIチームの20%ルールを使って、業務の20%の時間を西場さん(@m_nishiba)の指導のもと、プロダクトマネージャー(PdM)の業務をしています。
この記事では、エンジニア視点で初心者ながらジャーニーマップを作って学んだことを話したいと思います。
経緯
私が入社してから、アサインされたプロジェクトは検索プロジェクトでした。プロジェクトはまだ立ち上がったばかりで、機能も十分にありませんでした。
特に、エムスリー内の記事の検索をしてヒットしなかった場合に、何も表示されないことが、直近の問題の一つと考えていました。
そこで、ヒットしなかった時に、記事以外に薬剤のデータや外部のサイトも検索してそれらを表示するという施策が挙がりました。
自分でもこのプロジェクトをより成長させていきたいという思いもあり、西場さんに誘われて、初めてジャーニーマップの作成に挑戦することになりました。
ジャーニーマップ
ジャーニーマップとはユーザーとサービスの関わりを時系列で並べて、その時のユーザーの行動や感情を明らかにする手法です。 目的は、ユーザーの課題の発見と解決案のブラッシュアップにあります。
ジャーニーマップの具体的な書き方や方法論は参考図書に譲るとして、 初心者の視点でこれは意識した方が良いというポイントを3つまとめました。
1. 解像度を上げる
一つ目の意識すべきポイントは「ユーザー行動の解像度を上げる」ということです。
ジャーニーマップでは、まずユーザー行動を時系列に並べていきます。
私が最初に立てたユーザー行動は2ステップしかありませんでした。
- 「検索フォームに入力する」
- 「検索結果が表示される」
しかし、ユーザーの行動をもっと前から考え、細かく考えるべきでした。
- 「ユーザーが最新ニュースのメルマガを受け取る」
- 「メルマガからニュースを見る」
- 「その際に気になったキーワードを詳しく調べたいと思い、右上の虫眼鏡をクリックした」
- 「キーワードを入力して検索をクリック」
- 「検索結果が表示される」
このように単純に検索をするという行動だけでも、いくらでも解像度を上げられることに気づきました。 詳細を深掘りし、ユーザーの行動と感情について仮説を立てていくことで、より良い画面設計を作ることができます。これについて、次の項目で今回のケースに沿って説明したいと思います。
2. 仮説を立てる
二つ目の意識すべきポイントは「仮説を立てる」ということです。
ジャーニーマップを作成する上で、「検索フォームには『レミマゾラム』を入力した」として、その時の感情は「レミマゾラムの安全性について知りたい」と置きました。
これは私が実際に医師として検索した訳でもなく、ユーザーに詳細にインタビューした訳ではないのですが、 その時のユーザーの感情を仮説であっても設定することで、より深くユーザーの行動を考えることができます。
さらに仮説を立てると、レミマゾラムに関する結果を数件見て、そこで安全性に関する記事があればそれをクリックし、なければ、再度「レミマゾラム 安全性」で検索するだろうと予想しました。
その仮説のもとで、下部に表示する件数は20件に留め、下部にさらに検索ボックスを置いてデフォルトでレミマゾラムが入力されているという画面設計が良いだろうという結論になりました。
それまでの私の考え方は、「ユーザーの感情を完全に把握することは不可能なので分からない」と思考停止していましたが、 未熟であっても仮説を立てて、ストーリーを作ることの重要性を感じました。
3. ユーザーを主語にする
最後のポイントは、ありきたりなことですが、「ユーザーを主語にして考える」ということです。
UXを考える上では当たり前なのですが、このことを意識し続けるのは一定の訓練が必要です。
議論してる上で、つい「ユーザーの回遊率を上げるためには〜」と言ったり「この機能を実装するには〜」と言ったりしてしまいます。 ユーザー目線からでは、回遊率や実装の中身については関係ないので、少なくともジャーニーマップを考える段階では、忘れた方が良いです。
確かに、アイディアの種は、技術的な要素から出発することもありますが、あくまでも、ユーザーの課題を解決するということに軸を置くことが必須です。
特にエンジニアだと技術ベースで考えてしまう習慣があるので、意識して矯正する必要があります。
まとめ
本職の方からすると当たり前のことで大変恐縮ですが、プロダクトマネージャー初心者としてUXを考える際のポイントをまとめました。 これらのポイントはカスタマージャーニーを考える時だけではなく、普段のプロダクト開発において常に意識すべきポイントだと思っています。
We are hiring!
エムスリーでは幅広い興味を持つエンジニアを募集しています。 様々な技術的チャレンジができる他、私のように新卒入社であったとしても、エンジニアリング以外のことにも手を挙げれば挑戦することができます。 興味を持たれた方は是非お問い合わせください。
参考図書
UXを考える上での基本的な本です。必読書です。
- 作者:安藤昌也
- 発売日: 2019/05/15
- メディア: Kindle版
UXとは直接関係ありませんが、今回述べた仮説思考のための本です。
- 作者:内田 和成
- 発売日: 2013/05/02
- メディア: Kindle版
今回の話とは関係ありませんが、日々業務の中で意識しているリーダーシップのための本です。 ビジネスマンとしてやっていくための必読書だと思っています。何度も読み返しています。