エムスリーテックブログ

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業務システムもUXに拘る。業務整理から始めよう

エムスリー、プロダクトマネージャーの坂(ばん)です。現在、社内業務改善に取り組んでいます。業務システム開発においてもUX/ユーザー理解が重要であること、ユーザー理解の前段に業務理解があることに気づきましたので共有します。また、業務整理方法をこれから始める方に向け、業務整理の進め方を前職SIer時代の経験をもとに記載します。

業務システムもUXに拘る

f:id:ban_k:20210916202925j:plain 業務システムのユーザーは社員であり、UXが悪くとも「業務命令で強制的に使ってもらう」という選択肢があります。ユーザーが心地よく使ってくれるシステムを提供したいが工数を投下する説明がつかないと感じていました。しかし、期待した投資効果を得るために、UXに拘らねばならないケースがあると気づきました。

例として、特定ケースを想定してみます。

業務効率化を目的にした業務支援システムがあったとします。ユーザーはこのシステムを使いたがらず、業務命令で強制的に使ってもらうことにしました。ユーザーは業務命令に従い、このシステムを業務に組み込みました。しかし、業務効率は上がらず、むしろ下がっている。

このとき現場では次のようなことが起こっていました。 システムを使うことが必須になったので、ユーザーからCSVエクスポートとインポートの機能追加要望が上がってきた。使用開始に向けた必須条件だったので、開発することになった。新機能を使って、ユーザーは業務支援システムからデータを抜き出し、従来方法(自製Excelツール)で作業し、結果を業務支援システムにインポートしていた。結果、業務の総量が増えて業務効率が低下した。

業務システムでは、どれだけ効率良く業務目的を達成できたかが重要になります。プロセスが最重要である点は、コンシューマープロダクトと違うところかもしれません。使わせることが重要なのではなく、業務をデザインし、期待した効果を得ることが目的であると再認識しました。

業務理解、まずはそこからだ

UXの第一歩はユーザーを理解です。その強力なツールとしてインタビューがあります。事前に業務整理することで、ユーザー理解に役立てることができました。

ユーザーが毎日遂行する業務は、私の生活に一切登場しません。目的は何か、誰がいつやるのか、どんな行動なのかを理解しておかないと、インタビューで頻繁に会話を中断することになります。業務整理で得られる知識は、ユーザー行動のアウトラインとして、ユーザー理解の役に立つと感じました。

業務整理の進め方と資料化のポイント

これから業務整理を始める方向けに業務整理の進め方を紹介します。ここでは『業務機能仕様書』と『業務フロー』を取り上げます。

業務部門に任せない

私は、業務整理は業務部門が一人でやるタスクではないと思っています。業務担当者は、業務全体を俯瞰することが難しい立場にあるため、業務整理経験のあるメンバーがリードすべきです。

部署毎に担当業務範囲があり、業務効率を高めるため、類似業務を特定の担当者に集中させることが多くあります。業務部門の担当者は、複数ポジションをローテーションしたベテランかもしれませんが、把握できる業務範囲に限界があります。業務理解度に濃淡があるためバイアスがかかりやすく、立場上、所属部門に一時的にでも負荷をかける解決策は提案しにくいでしょう。

ですので、第三者が複数の業務部門担当者と協働することをおすすめします。ただし、業務部門担当者の協力は必要不可欠です。当事者意識を持っていただき、できることなら事前に然るべき工数を押さえておくべきです。

業務機能を列挙する(業務機能仕様書)

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<資料イメージ>業務機能階層表
業務機能は、3層に分けることを推奨します。1層目(大項目)は誰がみても理解できるような一般的な名称で記載します。3層目(小項目)は業務機能単位で記載します。担当者が変わる場合は異なる業務機能とします。2階層目(中項目)は3層目を集約し達成すべき目的を考えて記載すると見通しが良くなると思います。 さらに細かく作業レベルまで業務機能を記載しているケースを見ることがありますが、個人的にはそこまでしなくて良いと考えています。標準化されておらず担当者毎に差があるため、課題設定や運用検討の活用には使いづらいからです。気になる点は小項目の備考欄にメモしておく程度で良いと思います。個人的には帳票形式よりも、階層表にして一覧できる方が好みです。

この『業務機能仕様書』ですが、いきなり完成形にもっていくのはとても苦労します。業務部門担当者は業務を流れで把握しているため、1つずつ業務を列挙し詳細化することにストレスを感じます。大項目を記載したら『業務フロー』から始めるのがおすすめです。『業務フロー』を作成する傍らで情報を追加していき、完成後にレビューしてもらうと良いです。追加する情報は、「実施部門」「工期」「工数」「インプット」「アウトプット」などを目的に合わせて選びます。

業務機能に前後関係を追加する(業務フロー)

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<資料イメージ>業務フロー(小項目)

『業務機能仕様書』の大項目をテーマにし、業務部門担当者から流れを聞き出します。業務部門担当者は作業レベルで説明するので、一連作業の目的を意識し適宜サマリーします。業務機能を図形で貼り付け、前後関係を矢印で示します。この図形が業務機能仕様書の小項目に対応し、業務機能仕様書と業務フローのIDは一致することになります。 業務機能の担当者は重要ですので、スイムレーンで区切っておくと使いやすいと思います。 小項目で業務フローが1巡したら、中項目版の業務フローを作ると全体感が掴めます。

業務フローは業務順序の表現に適した資料です。目的に合わせて表現方法をアレンジしてください。 例えば工期短縮が目的のプロジェクトであれば、タイムチャートで表現した方が、課題設定に役立つと思います。

まとめ

業務システムのUXと業務整理について記載しました。過去経験のある業務整理の新しい側面に気づけて、とても刺激的でした。これからも気づきと学びを重ね、ユーザーが熱狂するものをつくりたいと思います!

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