はじめに
こんにちは。最近、ダンダダンのアニメ化が発表され、嬉しい気持ちのエムスリー エンジニアリンググループ VPoE 河合(@vaaaaaanquish)です。
皆さんは『Hit Refresh』という書籍をご存知でしょうか。
現Microsoft CEOであるサティア・ナデラの自伝であり、OpenAIやGitHubと現在"Hit"を続けているMicrosoftに成る過程において、会社を"Refresh"してきた物語が書かれています*1。
その中にあるサティア・ナデラのテクノロジー文化をリスペクトした一節が、私は大好きです。
テクノロジーは魅力的だが、 それ以上に魅力的なのがそれを設計した人達の深いこだわりだ。
実際にサティア・ナデラがMicrosoftに「こだわり」の塊であるギーク文化を取り戻しリーダーシップを注入する事でイノベーションを作ってきたという本になっており、是非多くの方に読んで欲しいと思っています。
私達エムスリーエンジニアリンググループでも「ギークでスマートな人達が活躍する事」を非常に大切にしており、採用から組織設計、コミュニケーションを含めてギーク文化が中心にあります。
エムスリー Advent Calendar 2023 24日目の本記事では、その文化の根底を支える3つのポイントを紹介して25日目、取締役CTO&VPoPの山崎(@yamamuteking)に打席を繋いでいきます。
1. 全員がレギュラーユニフォームを着ている状態
エンジニアリンググループには、約100名のエンジニア、PdM、QAが在籍しています。
企業規模の大きさであったり、医療分野における多くの事業を持っている事から、人数が少なく感じるかもしれませんが、ことソフトウェア開発においてはソニックガーデン 倉貫さんが書籍で書かれている通り「人が増えても速くならない」が通説です。
1チーム5~10人の規模を保つ事が高速なプロダクト開発に繋がるという話は、現代のエンジニアリング業界で広く語られている通りであり、エムスリーのプロダクト開発はまさにそれを体現しています。
エムスリーでは、この少ない人数で高速に開発する体制を取りながら、複数のプロダクトを開発し続ける事で、全員がホームランを生み出す打席に定期的に立つ状態を実現しています。 ユニフォームを着て何度も打席に立つ機会を経て、リーダーが生まれ、リーダーを中心にイノベーションが生まれる構図とも言え、これが1つ目のポイントになっています。
打席の例としての技術的選択
打席の代表的な例として、「技術的選択」があります。
開発計画や技術選定など技術に関する方向性を選択する行為は、ビジネスの将来を決める1つの重要な意思決定です。 自身のプロダクトや顧客、チーム、キャリア、ROIについて考える機会にもなり得ます。
エムスリーでは、技術的選択はチームひいては各エンジニアに完全に任せており、自分達にとって最適なモノを選ぶという意思決定の打席に何度も立つことになります。
こだわりを追求してPDCAを回す機会が増える、という所がポイントです。 実際、この意思決定の繰り返しを経てCTO級のエンジニアが生まれています。
何より、私がエンジニアとして活動していた時、技術的選択は楽しいものでした。
広く調べたり、検証したり、過去の負債を深堀ったり、技術と上手にハマる形を見つけるあの時間ってワクワクしますよね。
私は「技術者として技術的選択の楽しさを謳歌して欲しい」とも強く思っています。
チャレンジマネジメント
人数が少なく、チャレンジマネジメントが分散しない事もポイントになります。 TLやHRBPを通してwillを聞き出し、マネジメントチームで一人一人に向き合う時間も作っています。
「打席に立たされる」という状態ではなく「ユニフォームを着て定期的に打席に立つ」ことを理想とし、大切にしています。これもまた、「こだわり」を発揮してもらう上で重要だと日々感じています。
2. 生まれ続ける新しい試合
1つ目のポイントは打席でしたが、エムスリーでは新しい試合も多く発生します。
エムスリーでは、新しいソフトウェアプロダクトが生まれ続けています。
2000年創業の企業ですが、現在30以上のプロダクトを開発、運用しています。 近年では、私達一般患者も利用できるサービスも開発しており、実際に『デジスマ診療』などが急拡大を続けています。
こういった新しいプロダクトを生み続ける事が、エンジニア組織においてギークでスマートな人達が活躍するポイントであると、日々感じています。 先のような技術的選択の機会だけでなく、チーム構成や新しい開発手法に目を向けたり、新しいユーザ層や価値観に触れるきっかけになっています。まさに試合です*2。
現代風に言うのであれば、コンパウンドスタートアップでしょうか。 他社で言えば、LayerXさんやestieさんも同じ方針で、キーワードとして耳にした事があるエンジニアも多いかなと思います。 comemo.nikkei.com
複数の関連プロダクトを並行して開発する戦略は、事業拡大において良い影響を与える戦略として広まりつつあります。これは、別の側面としてエンジニア組織に多くの打席をもたらし、イノベーションの源泉に繋がっているというのがエムスリーの所感です。
エムスリーは、流石にスタートアップと言える規模ではありませんが、100以上のグループ会社、事業があり、ソフトウェア開発の手が及んでいない領域もまだまだ沢山あります。 その中でPdMが常にチャレンジの場所を生むことで、技術的選択や様々なフェーズでの開発を経験できる、という点が2つ目のポイントになっています。
気持ちは圧倒的コンパウンドベンチャーです笑
3. 背番号に対する考え方がない
人、プロダクトだけでなく、制度においてもギークでスマートな人達が活躍できる環境について考えていることが最後のポイントです。
代表的な例として、エンジニアにおいては画一的なジョブグレードがありません。
「〇〇は出来るけどXXがネックでグレードが上がらない」という事はありません。
また、「エンジニアとして広い技術をバランス良く扱える方が優れている」「専門性が深い方が優れている」といった考え方でもありません。
インパクトの大きなプロダクトを作るために動いている人が評価される制度を運用しています。
背番号3番が繋いで4番が打って、ではなく、全員がホームランバッターを目指す形です。
実際にエンジニアとしての専門を深める瞬間もあれば、基盤/セキュリティチームがプロダクトコードを改善したり、機械学習エンジニアがフロントエンドに触れる事もありますし、PdM・QAチームと同じ動きを兼任して活躍しているエンジニアも居ます。技術が好きな人達が、様々な形で打席に立っています。
評価の軸である事業インパクトを見るにあたっては、全社的にROI文化があり、エンジニアリンググループでも日常的にROIの話をするほど浸透しています。 ROI文化の実態については、最近YouTubeで公開している「CTO&VPoEに聞いてみた」シリーズで、技術的負債や中長期チャレンジ、リファクタリングや各職種の特性の話題を絡めながら話しています。 youtu.be
是非、イイネとチャンネル登録をよろしくお願いします笑
おわりに
いかがでしたでしょうか。
よくカジュアル面談等々でも聞かれます「なぜギークでスマートな人達が活躍できると言えるのか」について、ざっくり「人」「プロダクト」「制度」の側面から、私が感じている3つのポイントをまとめました。
ギークでスマートな人、Hit Refreshの言い方をすれば「深いこだわりをもって設計できる人達」が活躍する魅力的で偉大な組織になるためには、サティア・ナデラのようにこだわりをリスペクトし、活かすための土壌が大切だと思っています。 その結果として、ギークがイノベーションで世界を変えていく事を信じています。
そのために、より良いエンジニアリング組織の形を模索し続ける事を引き続きやっていきたいなと思う次第です。
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私自身もそうですが、新しい技術やアルゴリズム、アーキテクチャ、開発手法を知り実践する事を楽しみとしている人ばかりです*3。
深くこだわりながら、その共有を楽しめる文化があります。
実際、情報系出身も多いですが、医学や物理、数学出身者もいますし、史学やそれこそ最初の職業が営業というキャリアのエンジニアも在籍しています。
ギークであること、技術が好きが集まっていることがTech BlogやYouTubeからも感じて貰えればと思っております。
私がVPoE就任時に撮影したCTO対談動画でも語っており、徹底してずっとこの「ギークでスマートな人達に活躍してもらう」をやっています。
気になった方は、是非採用サイト右上よりカジュアル面談を申し込んでいただけると、基本的に私、河合(@vaaaaaanquish)が対応致します。 何でもお話しましょう!
明日のエムスリー Advent Calendar 2023 は、取締役CTO&VPoPの山崎(@yamamuteking)です!
良いお年を!