こんにちは、エムスリー エンジニアリンググループ AIチームに今年の2月にジョインしました河合 (@vaaaaanquish) です。 エムスリーテックブログでは今回初めての投稿で緊張しますが、お手柔らかにお願いします。
はじめに
近年、ソフトウェアエンジニアの「キーボード」への熱は高まり続けています。
昨年には、DMMさんにてキーボードをこよなく愛する人達によるイベントが開催され、250人以上が集まり、自作のキーボードやキーキャップを扱うノウハウが広く共有されました。 inside.dmm.com
また2018年を振り返ると、自作キーボード専門店である遊舎工房の実店舗がオープンしたり、Cookpadさんはインターンでも自作キーボードの作成を取り入れて話題になりました。 techlife.cookpad.com こちらのインターンは、PCBでのリバースエンジニアリングやキーボードの回路の設計など、非常に充実したインターンだったという報告のブログが参加者によって複数書かれています。*1 *2
そしてCookpadさんを代表に、多くのIT企業テックブログから、社員が利用しているキーボードを紹介する記事も多く出ています。 techlife.cookpad.com
自作キーボードを作る会、はんだ付けなど工作可能なラボ棟を社内に持ち、そちらもチラ見せしてくれている面白法人カヤックさん。 techblog.kayac.com
社内コミュニティの活動や統計量、社員のこだわりも深くインタビューして紹介しているfreeeさん。 developers.freee.co.jp 各社各人、ソフトウェアエンジニアリングとは切っても切り離せない「キーボード」というツールに対して愛情を持っており、非常に個性が出るのがよく分かります。
もちろんエムスリー内でも、キーボードに対する熱は高まっています。
エンジニアリンググループにて毎週開催しているTech Talk *3 では、先日キーボードをテーマに発表し合うキーボード回も行われました。
キーボード回では、「キーボードのFirmwareの開発から、クリーンアーキテクチャで言われるDependency Inversion Principleを見出した話」や「分割キーボードのすすめ」、「ErgoDoxを買ったけど使いこなせなかった話」から、各自のお気に入りのキーボードのアピールといった内容がLightning Talk形式で話され、多くのエンジニアが楽しく聞き入る回となりました。エムスリーTech Talkについては、各登壇者がそれぞれ資料を一部公開しており、キーボード回分については以下を見る事ができます。
- Dependency Inversion Principle in Keyboard Firmware - Speaker Deck
- better keyboard for your health - yukinagae
- lily58がいいぞっていう話 - Speaker Deck
- 宇宙誕生の歴史と人類が赤ポチという到達点に至るまで - Speaker Deck
また、社内Slackの#keyboardsチャンネルでは、新しいキーボードの情報や記事がシェアされており、新しく自作キーボードを作ろうという人も現れている程です。
本記事は、そんなエムスリーのエンジニアが日々業務で利用しているキーボードと、そのこだわりを書き留めたものです。
エムスリー社員のこだわりキーボード環境
筆者である私とカメラ担当の大瀧(@_329_)さんとでエムスリーの社内を回って、キーボードについてのエピソードを聞きながら、使い心地や普段の環境について伺いました。
TeX Yoda Ⅱ
まずは私が利用しているTeX Yoda Ⅱです!
正直に言ってしまえば、このキーボードを広めたい一心でこの記事を書いていると言っても過言ではありません。
HHKBのサイズ感とThinkPadのTrackPointという私が好きな所を取ってきて、CHERRY互換軸も加えた私の理想のキーボードで、公私ともに愛用しています。
HHKBとサイズは変わりませんが、マウントされているプレートが重く全体で1,080gあり、尊師スタイル*4で利用する際にもキーボードがズレる事を気にせず入力する事ができます。
愛なしでは持ち運びも困難なTeX Yoda Ⅱですが、ホームポジションから離れる事なくキーボードとマウス操作を行える数少ないキーボードの一つだと思っています。ホームポジションは最高です!
TeX Yoda Ⅱは、massdropでキットを購入できます。
WhiteFox Mechanical Keyboard
フロントからバックエンドまでフルスタックに開発をしながら、現在AIチームでも一緒に働くNickさん*5は、WhiteFoxを使っています。
アルミ製のプレートに乗った白と青のキーキャップがかなりクールなキーボードです。WhiteFoxは、matto3o氏とInput Clubが共同作成したキーボードで、matto3o氏がその作成経緯と哲学について語っているブログ記事 (Link) を見るのがオススメです。
Nickさんは、Massdropをよく見ると自負するほどキーボードが好きで、このWhiteFoxもfirst roundで購入したそうです。
最初のWhiteFox 1000台にのみ入った、裏側の刻印を見せてもらえました。
(かっこいい…)
Nickさんは家ではCTRL mechanical keyboardを愛用しているらしく、キーボードへの愛を存分にアピールしてくれました。ありがたい限りです…!
- Massdrop: https://drop.com/buy/the-whitefox-keyboard
- Input Club: https://input.club/whitefox/
ErgoDox EZ
近年セパレートなエルゴノミクスキーボードとして、人気なキーボードの一角を担っているErgoDoxのユーザも居ます。
以下は、昨年度の技術書店でのエムスリーテックブックや当テックブログ記事を執筆する他、冒頭で紹介した社内LTでもキーボードのFirmwareについて語っていたエンジニアリンググループの松原(@ma2ge)さんのErgoDox EZです。
松原さんは、前述のNickさんにキーボードの沼に落とされて以降、configを触ったりMassdropを巡回するのが趣味になるほどハマってしまったそうです。
松原さんのデスクに行くと嬉々としてハンドスピナーキーキャップを回してくれたり、カラフルなキーキャップやArtisanキーキャップを買った経緯について熱く語ってくれました。
キーの軸の型の問題こそありますが、キーキャップはどこまでも自分の好きなようにカスタマイズでき、各人のこだわりと好みが見え隠れして面白いですね。
松原さん以外にも、最近AIチームの西場(@m_nishiba)さんがErgoDoxを購入したらしく、ErgoDoxの人気が伺えます*6。 ErgoDox EZは、ErgoDoxの共同購入プロジェクトで、以下のページから購入、詳細を見る事ができます。
- ErgoDox EZ: https://ergodox-ez.com/
Lily58 Pro
私と同じAIチームに所属する岩月(@kaito_two)さんは、Lily58とMagic Trackpadを使っており、社内でもLTを行うなど布教活動をしています。
Lily58は、キーボード上での指の動作が極力少なくなるよう設計されたColumnar Staggered配置と呼ばれるキー配置を採用しているだけでなく、前述のErgoDoxの多いキーを少なすぎない程度まで減らす事をテーマとしたコンパクトなセパレートキーボードです。
岩月さんは、学生時代に前述のErgoDoxを使っていたそうですが、小さい手に対してキーが多く親指が上手く馴染まない課題を抱えていた時に、研究室のキーボード沼の友人からおすすめされてLily58を使い始めたそうです。
気付けばエムスリー テックトークでLily58をオススメする側に回っている訳ですから、何がきっかけでキーボードにハマるかは千差万別、人それぞれですね。
Lily58シリーズは、ゆーち(@F_YUUCHI)氏が開発しており、現在は高機能な自作キーボード組み立てに慣れている人向けのLily58 Proと、シンプルなLily58 Liteがあり、どちらも遊舎工房さんで購入できる形のようです。
Mint60
Lily58のようにセパレートキーボードの人気は高まっており、エムスリーにはMint60のユーザも居ます。 こちらは、最近入社された渡辺(@_nabech)さんのMint60です。
転職を踏まえて買ったばかりの綺麗なMint60。セパレートキーボードとしては有名所のMiSTEL BAROCCOを利用していた渡辺さんですが、去年買い替え時に品薄で手に入らず、代打としてMint60を購入して以来愛用しているそうです。
「そもそも何がきっかけでセパレートキーボードを買ったんですか?」と聞くと「誕生日に妻と秋葉原でデートしてる時に買ってもらいました」と応える渡辺さん。私も周囲も思わず「本当ですか…そんなことあるんだ…」と言ってしまいましたが、とても良い話です。
Lily58を使っている岩月さん同様、何がきっかけでキーボードにハマるかは本当にわかりませんね。
Mint60は、ゆかり(@eucalyn_)氏が開発しており、その思想から組み立て手順、購入方法をブログで紹介して下さっています。ゆかりキーボードファクトリーという独自サイトから購入可能です。
Kinesis Advantage
エルゴノミクスといえば、もちろん伝統的なKinesisのユーザも居ます。
Kotlin Fest 2018*7やtry! Swift Tokyo 2019*8 にもエムスリーのソフトウェアエンジニアとして参加していた岩佐(@bloody_snow)さんです。
Kinesis独特の人間工学を追い求めた形状もそうですが、なんと言っても目を見張るのが、百式を思い出させんとする*9眩いばかりの金色のキーキャップです。
以前はデフォルトの黒いキーキャップを使っていたそうなのですが、突然このゴールドのキーキャップに転換したとのこと。この話を聞いている最中にも「突然ゴールドに変更した時は、流石に周囲が沸いた」というエピソードを別の社員が語ってくるほど、何とも印象的で強いカラーです。
長らくKinesisを愛用しているとの事で、横から見させてもらうとかなりシームレスに入力していました。
岩佐さんは家庭でもKINESISとErgoDox、Magic Trackpad、Razer Orbweaverを利用しているとの事。かなりクールです。
t.coergoeox ez届いたので、完璧な入力環境が完成した。kinesis+ergodox+orbweaver+g502+m570+magic trackpad2 pic.twitter.com/OBmOkcx02J
— bloody snow (@bloody_snow) November 24, 2018
まさに理想のゲーム環境。憧れます。
KINESIS: Advantage2 Wired Ergonomic Keyboard for Mac & PC | Kinesis Keyboards
Happy Hacking Keyboard
今回記事を書くにあたって調べた中で、エムスリーで最も利用されていたのがHappy Hacking Keyboard(HHKB)でした。 私自身もかつてHHKBユーザでしたし、私が所属するAIチーム(記事執筆時 13名)の中でも、5人がHHKBユーザです。
JIS、US配列や無刻印、bluetooth等様々なモデルが社内でも見受けられましたし、エンジニアリンググループのメンバーの中には、HHKBを製造しているPFUが公式に出しているキーボードカバー*10を持っている人も居ました。
それぞれ話を聞いていくと「学生時代から使い慣れていて、もう移行できない」という人も居れば、「自作から戻ってきたら安定供給されるので幸せを感じた」という人も。中には「会社に入ってから同僚の影響でHHKBを使い始めた」という人もおり、自分たちが使うツールにこだわる人、そのツールを広めようとする人、両者が混在しているのがよく分かりました。エムスリー テックトークでキーボード回が開かれたのも、自然な流れだったのだと思います。
また、今回記事を書くにあたって社内を散策したところ、エンジニアリンググループだけでなく、SPBUグループ*11などでもHHKBの利用者が見受けられました。
その中には学生の頃に使い始めて以来HHKBを愛用している人もおり、エンジニア以外にも広く様々な人の愛されるHHKBを感じました。感嘆の一言です。
- PFU HHKB: Happy Hacking Keyboard | PFU
その他
その他、HHKBに次いで多かったキーボードがRealforceとApple Magic Keyboardでした。
Realforceは、学生時代から愛用している人も多く、流石東プレという気持ちです。私も中学生の頃、Realforceのゲーミングモデル*12が欲しくて、試行錯誤したのを思い出します。
エンジニアリンググループは、Macbookユーザが比較的多いのですが、キーボード環境を統一させるためにAppleが公式に製造、販売しているMagic KeyboardやMagicpadを使っている人も多く居ました。
今回社内をインタビューして回る中でも、各キーボードのエピソードを周りで聞いて「自分も好きなキーボードを見つけたい!」「試してみたい!」「これから自作に挑戦したい!」という人が複数おり、エムスリーのキーボード事情がこれから更に盛り上がりそうな予兆を感じました。
- 東プレ Realforce: REALFORCE | 日本製プレミアムキーボードの最高峰
- Apple Magic Keyboard, Magicpad: https://www.apple.com/jp/shop/accessories/all-accessories/mice-keyboards
おわりに
本記事では、エムスリー社員のキーボードを取り巻く環境について紹介しました。
自作キーボードに挑戦する人から、既存のキーボードをカスタムする人、愛着のあるキーボードを使う人、それぞれにエピソードがあり、それらをお互いに共有する形で良いものを探しているのが伝わればと良いと思います。
最後になりましたが、キーボード環境を紹介するブログ記事へのリンクを快諾して頂いた各社の皆様ありがとうございました。 エムスリーでは、今後は他社の事例を踏まえながら、自作キーボードを一緒に作る等、活動の幅を広げていければと思っています。
We are hiring!
エムスリーでは、キーボードのようなガジェットの話からツール、エンジニアリング、プロダクトの話を互いに共有し、高め合える仲間を募集しています。 お気軽にお問い合わせください。
*1:http://precure-3dprinter.hatenablog.jp/entry/2019/03/21/Cookpad_Spring_1day_Intern_%E8%87%AA%E4%BD%9C%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%89%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%81%AB%E5%8F%82%E5%8A%A0%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F
*2:https://yuchi-kbd.hatenablog.com/entry/2019/03/24/013714
*3:社内でのLT大会のようなもの
*4:ラップトップのキーボードの上に外付けキーボードを置き入力する風貌, リチャード・ストールマン氏の開発スタイルより
*5:関連記事:https://www.m3tech.blog/entry/2018/07/23/112324
*6:西場さんが使いこなしている様子が未だ見られないですが
*7:https://www.m3tech.blog/entry/kotlin-fest-2018
*8:https://www.m3tech.blog/entry/try-swift-2019
*9:本人も言っていました
*10:正式名称はHHKBキーボードルーフ
*11:ソリューションパートナービジネスユニット, メディカル業界向けセールスマーケティング支援グループ
*12:REALFORCE RGB