エムスリーテックブログ

エムスリー(m3)のエンジニア・開発メンバーによる技術ブログです

新機能開発の突破口:この機能の顧客は誰?

こんにちは! エンジニアリングG プロダクトマネージャーの杉本です。

私はインターン・業務委託を経て、今年(2025年)4月にエムスリーに入社しました。現在はデジスマチームに所属し、経験豊富なチームメンバーと共に医療業界のDXに真正面から取り組んでいます。

入社してからの半年間、人生で経験したことがないような濃密な学びを重ねながら、楽しく働くことができています。このブログでは、そんな学びの1つをシェアできればと思います。

Imagenで今までの半年間を表現してみました

はじめに:急成長プロダクトゆえの難しさ

私が担当するデジスマチームでは、デジスマ診療の開発をしています。デジスマ診療とは、予約や問診、決済といった医療機関の受診に必要な機能をワンストップ化したクラウドサービスで、「診療に関わる患者、事務、医師全員の新しい体験」を目指しています。詳しくは是非次の動画をご覧ください!

www.youtube.com

おかげさまでデジスマ診療は多くの医療機関に導入いただき、日々成長を続けています。

指数関数的に増加するデジスマユーザー数*1

しかし、その成長の裏側で、私は急成長しているプロダクトならではの難しさを感じていました。

本記事では、この経験から得られた学びをいくつか紹介したいと思います。次のような方にとって少しでも参考になれば幸いです。

  • プロダクトマネージャーに興味がある、または目指している方
  • 急成長中のプロダクトで、多様な顧客に直面している方
  • MVP開発やプロダクトの市場投入プロセスに関わっている方

顧客の声はいつも正しい、しかし…

ある時、デジスマをさらに便利にする新機能をチーム内で検討していました。早速プロトタイプを作成し、複数の医療機関にインタビューをしたのですが、そこで予期せぬ事態に直面します。医療機関様によって、おっしゃることが全く違うのです。

例えば、「めちゃくちゃいい機能ですね! 明日からでも欲しいです!」と絶賛してくださる方もいれば、 「いや、そこの改善をするより、こっちの機能に集中して欲しいんですけど…」と、全く異なる要望をいただくこともありました。

なぜ、ここまで反応が分かれてしまうのか。その背景には、プロダクトが成長し、より幅広い医療機関へとご利用が広がってきた結果としての医療機関の多様性がありました。医療機関の診療スタイルは決して一様ではありません。医療機関によって異なる様々な要素が、デジスマへのフィードバックに影響をもたらします。ヒアリングで伺う意見はどれも現場からの貴重な声であり、嘘偽りのない本音です。しかし、全ての声に応えようとすると、機能は複雑になり、開発の方向性は定まりません。

「一体どうすればいいんだ…?」
「本当にこの機能は必要なのか? もし必要だとしても、どのような仕様にすれば喜ばれるんだ?」

私はどう進めるべきか、頭を悩ませていました。

灯台下暗し! 突破口はすぐ近くにあった

どの意見を優先すべきか悩む中で、私は一度すべての情報を脇に置き、原点に立ち返ることにしました。

「そもそも、この機能を”本当に”必要としている顧客は誰なのか?」

前述の多様性から、全ての医療機関を同時に満足させる機能を作るのは極めて難しいです。であるならば、この機能によって最も課題が解決され、最も喜んでくれるのは、どのような医療機関なのか。ペルソナを改めて深く、具体的に定義し直すことにしたのです。

チームや顧客からのヒアリングを通じて一からペルソナを洗い出し定義したことで、私の頭の中にある仮説が思い浮かびました。それは、「あれ? このペルソナって、エムスリーの別サービスが関わっている医療機関そのものでは…?」というものです。

デジスマに限らず、エムスリーでは医療機関のDXをサポートするサービスを複数提供しています。偶然ですが、それらのサービスの一つが提供されている医療機関が、私が定義したペルソナと完全に一致していたのです。しかも、彼らは同じエムスリーの仲間です。私はすぐにチームにアプローチし、ヒアリングと意見交換の場をセッティングしました。

その結果は、想像以上でした。現場で医療DXを担っているプロとして、彼らは非常に解像度の高い、忌憚のない意見を次々とくれました。これにより、これまで方向性が定まっていなかった機能の仕様が一気に固まり、確信を持って開発を進めることができるようになったのです。

この経験から得られた学び

今回の経験から、プロダクトマネジメントにおける重要な学びを2つ得ることができました。

1. 「誰のための機能か」を定義し、検証する

多様な顧客の声は、プロダクトを成長させる上で不可欠なものです。しかし、そもそも「誰のための機能か」というコンテキストが定まっていなければ、集めた一次情報が断片的なノイズとなり、かえって混乱を生んでしまうことがあります。 それらの声の「最大公約数」を狙うと、誰にとっても中途半端な機能になってしまう危険性があります。

重要なのは、想定している顧客は誰かを明確に定義し、その人たちが本当に欲しているかを深く知ることです。そして、その顧客層が市場にどの程度存在するのかを考えることで、開発の優先順位を判断できます。

2. 答えは社内にあるかもしれない

顧客の課題を知るための方法は、顧客への直接のインタビューだけではありません。特に、顧客と日々接している営業やカスタマーサポート、そして今回の私のように、別サービスのチームであったとしても、彼らは顧客に関する情報の「宝の山」です。

課題解決の情報にリーチするために、社内外にどのようなリソースがあるのかを常に考え、柔軟に活用することの重要性を痛感しました。

まとめ

入社後、急成長するプロダクトの中で多様な顧客の意見に直面しましたが、「誰のための機能か?」という問いに立ち返り、そして社内のリソースを最大限に活用することで、突破口を見出すことができました。プロダクトマネージャーとしての大きな一歩を踏み出せた経験だったと感じています。

この記事が、同じように奮闘している誰かの参考になれば幸いです!

We are hiring!!

ここまでお読みいただきありがとうございました。

エムスリーでは、優秀でさまざまなタイプのプロダクトマネージャーが在籍しており、互いに切磋琢磨しながら学び合うことができる環境です。

また、エムスリーでは医療業界のさらなる前進のために新しい事業やプロダクトが多数立ち上がっており、得られた学びをさらに実践する成長の機会も豊富です。

プロダクトを通じて医療課題を解決したいと考えている方がいれば、次のURLからカジュアル面談のご応募をお待ちしています! jobs.m3.com

*1:エムスリー2026年3月期 第1四半期決算発表資料より