エムスリーテックブログ

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目先のタスクに追われるプロダクトマネージャーが自問自答すべき2つの問い

こんにちは。エンジニアリンググループ プロダクト支援チームでプロダクトマネージャーをしている中村です。

突然ですが3月末というタイミングは、多くのプロダクトマネージャーの方が1年間の成果を振り返るタイミングかと思います。

私は昨年4月に育休から復帰してからというもの、育児と仕事に追われる日々を過ごしており、この1年間は光陰矢の如しでした。

振り返ってみると、目先のタスクに追われプロダクトマネージャーとして最も重要な未来を考えるということが十分に行えていなかったように思います。

そこで今回は、目先のタスクに忙殺されがちなプロダクトマネージャーが未来を考えるために工夫できること、というテーマでブログを書きます。

はじめに:小さな未来予測と大きな未来予測

先日、社内のプロダクトマネージャー定例*1でVPoPの山崎さんが、プロダクトマネージャーの重要な仕事は未来を予測することだと話されていました。

曰く、「プロダクトマネージャーは少なくとも皆が喜んでお金を払う程度の大きさの未来を予測する必要がある」と。

未来予測の中でも大小あり、小さい未来予測もとても重要です。ただ、世の中がどうなっていくのか、その流れの中で人は何にお金を払うのかということを予測出来なければ売れるプロダクトは作れないということでした。

一方、私はここ数ヶ月間、PDCAやプロダクト改善に忙殺されており、目の前のプロダクトのことしか見れていない、本当はもっとプロダクトの未来を考えていかなければならないのに出来ていないという焦りを感じている状態でした。

そんな中で湧いてきた疑問が、自分よりも遥かに忙しいであろう山崎さんはどうやって大きな未来予測をしているんだろうか、というものでした。

この疑問について山崎さんとの1on1で聞いてみたところ、ある1つのコツが見えてきました。 それは、大きな未来予測をするための「問い」を持つということでした。

常に目的に立ち戻る

最初に、山崎さんとの1on1の中でのとある会話をご紹介します。

私:「AskDoctorsアプリのユーザーインタビューをしました。長年にわたり有料会員登録してくださっている方から話を聞くことができました。この方は○○な使い方をしており、まさに今後強化していきたい△△な領域でのヘビーユーザーでした。」

〜このユーザーにどんな機能が刺さるかのディスカッション〜

山崎さん:「さて、戻りましょう」

私:「……!!!」(え、戻るってどこに?あ、今すごく細かい1機能の話になっていたな)

山崎さん:「目的は何でしたっけ」

私:「有料会員数を増やすことです」

山崎さん:「本当ですか?例えば利益が増えれば良いのではないですか?会員数を増やすこと以外にもオプションはありますよね?」

私:「!!!!!!」(たしかに…!前提を盲信していた…)

このように、具体的な施策や機能を考え出すと、そこに集中するあまりいつの間にか目的が意識から抜け落ちてしまうことがあるかと思います。また、そもそも何が目的かを正しく捉えられていないと、狭い範囲で施策を検討することとなってしまいます。

2つの問い

ゴールに対してどのような戦略でいくのかをワイドオプションで考え、なぜそのオプションを選択したのか、別のオプションではないのかを認識しておくことが重要ですが、いつの間にか目の前にある課題やタスクに囚われて目的から意識が離れてしまっていた、といったことはよくあることだと思います。

そこで、上記の対話の中で気づいたことを自分自身で気づくために活用できそうな、2つの「問い」をご紹介します。*2

【1】シュートを打っているか?

この問いは、今取り組んでいることが目的(KGI)に直結することなのか? を問うものです。

サッカーやバスケットボールなどの球技に例えると、試合に勝つためにはゴールを決める必要があります。そのためには、シュートを打たなければなりません。 試合の目的は基本的には勝つことです。勝つために、ゴールを決めることが考えられているでしょうか。 仲間とのチームワークや、パスを回すことなど、別のことが目的に成り代わってしまっていませんか?

つまりこの問いは、KGIに結びつくことが出来ているか? KGIから遠いことばかりやっていないか?を確認するものです。

「KGIに直結することが出来ているか」という思考のフォーマットとしては、八百屋理論がわかりやすいため、合わせてご紹介します。 八百屋理論についてはプロダクトマネージャーカンファレンス2022での山崎さんの発表をご参照ください。

2022.pmconf.jp

【2】自分が競合のプロダクトマネージャーだったら何をやるか?

または「自分の担当サービスを自分が買収したとしたら何をやるのか?」という問いでも良いですが、インパクトの小さいことをやっているのではないか、ワイドオプションで考えられているかを確認するための問いです。

ちなみに、ワイドオプションで考えるということに関して、山崎さんとの1on1の中での会話が面白かったのでご紹介します。

~AskDoctorsの利益を増やすためにどういう戦略をとっていくべきか相談している中で~

山崎さん:「中村さんは子育て中なので、子育てに例えてみましょう。30歳までに年収1億円稼げる子どもを育てるにはどうしますか?」

私:「えーっと…」(え、いきなり子育て? しかもぶっ飛んだお題だし困ったな…)

「ゴルフなどのスポーツを子供の時から徹底的にやらせるでしょうか。あとは、お小遣いで株式投資をやらせるという話もたまに聞きますよね。」

山崎さん:「他にも、例えば海外に移住するという選択肢もありますよね。」

私:「確かに…!言われて見ればそれもありますね。他、なんでしょう…」(色々ありそうだけどすぐに思いつかないな…)

山崎さん:「これがワイドオプションで考えるということです。プロダクトマネジメントも同じですよね。プロダクトの場合は、ニーズのあるものを作って利益を得るという目的に対して、ワイドオプションで考えることが重要です。今、子育ての話だと○○というアイデアが出ましたが、AskDoctorsでは○○というオプションは考えましたか?」

私:「あ!それは、考えてなかったです。言われてみればオプションとして洗い出しておく必要があるのに何故考えていなかったのでしょう…」

山崎さん:「他にも△△というオプションもありそうですよね。」

私:「たしかに、それなら更に□□というオプションもありそうです!」(なるほど、こうやってオプションを広げていくのか)

プロダクトマネジメントにおいてワイドオプションで考えるということを、まずは子育てという身近なテーマを例に実践することで、より具体的にイメージできました。

子育てもプロダクトマネジメントも、考えられるオプションを徹底的に洗い出したうえで、目的に対するインパクトや難易度等を総合的に鑑み、優先順位を付けていくという点で同じだという話でした。

おわりに

プロダクトマネージャーとして売れるプロダクトを作っていくためには、冒頭で紹介したように「少なくとも皆が喜んでお金を払う程度の大きさの未来」を予測する必要があります。

  • シュートを打っているか?
  • 自分が競合のプロダクトマネージャーだったら何をやるか?

これら2つの問いを自分自身に問いかけることで、目先の課題やタスクに囚われていないか、未来をワイドオプションで考えらているか、自分自身で気づくきっかけになるのではないかと思います。

本ブログが日々の忙しさに疲弊しているプロダクトマネージャーの方の参考になれば幸いです。

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*1:プロダクトマネージャー同士で学びを共有し合う勉強会です。詳しくはこちらのブログに記載されています。https://www.m3tech.blog/entry/2022/12/25/203858

*2:実際に、山崎さんとの1on1の中で再考のきっかけとなった質問がベースとなっています。