エムスリーテックブログ

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ホームランバッターと同じ環境で働けると何が嬉しいのか?その2 - トレードオフに逃げない

こんにちは。エムスリーでプロダクトマネージャーとして働いている岩田(@a___iwata)です。

以前、ホームランバッターと同じ環境で働くことで得られる知見の1つを以下で紹介させて頂きました。

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今回はその2本目(ホームランだけに)として、成功するプロダクトの意思決定を見ることで分かったことをご紹介させて頂きます。 ホームランバッターと同じ環境で働けると何が嬉しいのか? という問いの答えになれば幸いです。

意思決定はオプションで考える

事業の意思決定というのは(ワイド)オプションで考えることが重要だとされています。 雑に言ってしまえば「コストカットのために、Aをやるかやらないか」より、「コストカットのために、考えられる施策はAとBとCで、これらをやるべきか・やらないべきか」と言われたほうが判断しやすいですよね。更に言うなら、「AとBとC」の挙げ方がMECEであることだとか、ポジションを取ること等が求められると思います。

この話は一般的なものとして詳細は割愛しますが、とにかく「意思決定はオプションで考えるべし」は基本中の基本であると考えます。 エムスリーは社長含め元コンサルティングファームの人が多いこともあり、この考えはかなり徹底されています。

「意思決定はオプションで考える」の先へ。「トレードオフに逃げない」

しかし実はこの「オプション」には罠があります。オプションAとBとCを列挙した時点でなぜか満足してしまい、それらよりも優れたオプションDを考える努力をつい怠ってしまうというものです。

エムスリーではよく以下のような光景を見ます。

1.「この目標達成のためには、オプションAとBとCが考えられます。それぞれトレードオフがあるのですが、Aがベストと考えます」
2. 「そのトレードオフが発生しないようなオプションXがあるんじゃないの。例えば(オプションの素案)はどうだろう」
3.「なるほど、考えが足りていなかったです。もう少し考えさせてください」

私自身も2の指摘は何回も頂きました(し、今も頂くことはあります)。

エムスリーでは年間50億円の利益が見込まれるプロダクトや事業の創出が求められます。 50億円となると、普通に考えて普通に実行しても達成することはほぼ不可能です。何かしらの工夫やアイデアが必要になります。 普通に思いついたオプションAとBとCを列挙して満足していては、そうした工夫やアイデアを生み出すことはできないと考えます。

そして、エムスリーでそうしたプロダクトや事業を創出してきた方は皆須らく上記のスタンスを徹底しています。私はこのスタンスを「トレードオフに逃げない」と呼んでいます。

「トレードオフに逃げない」の実践

「トレードオフから逃げない」を少し具体的に考えてみます。

以下などはよくあるパターンではないでしょうか。

  • オプションA:1人月。新規顧客への売上向上インパクトがXX円ほど見込める
  • オプションB:1.5人月。既存顧客へのアップセルインパクトがYY円ほど見込める

「AとBのどちらをやりましょう?」「どちらを先にやりましょう?」という提案になると、大体以下のような話になります。

  • 我々は新規顧客を取るべきか既存顧客を取るべきか
  • 今我々のプロダクト・事業はどのようなフェーズなのか
  • 半期目標の状況から見てAとBどっちが先に誰がほしいか

このように、基本的にはA/Bをめぐる様々な思惑や期待の対立が発生します。 こういう対立が起きた時に"ビジョン"や"コンセプト"を持ち出し、対立を収めるという方策がよく取られると考えます。

が、まさにここに大きな落とし穴、AもBも一挙両得でできてしまうオプションCを考えなくなる・思考停止してしまう、というものがあると考えます。 この落とし穴に嵌ると、新規顧客と既存顧客か、半期目標か長期目標か、AをリードするXさんかBをリードするYさんか、といった二項対立へ「安易に」走ってしまう度合いが非常に高まるのではないでしょうか。 (もちろん、そんなオプションCは成立しないのでAかBかという(苦渋の)決断をするしかない場合もあるのですが)

ここでオプションCについて考え尽くす、知恵を振り絞れるかどうかという要素はプロダクトの意思決定それぞれに効いてくるため、中長期的に見ると大きな差を生み出す源泉になると考えます。

そしてこの習慣がエムスリーには徹底されており、そこが競争力の源泉なのだなと日々感じています。

「トレードオフに逃げない」を独力で身につけることは難しい

「トレードオフに逃げない」の実践は困難を極めます。プロダクトマネージャーの仕事の1つには優先順位を決めること、やらないことを決めることというものがあります。 これを十分に達成しないと、開発チームが何をすれば良いのか分からなくなり、生産性が大きく損なわれるリスクが有るためです。

「トレードオフに逃げない」は、それ自体が優先順位を決めることとトレードオフにあります。「このトレードオフを回避するためには、もっと良い仕様やアイデアがあるのではないか」と延々と考えていてはいつまでたっても優先順位は決められず、開発チームが混乱してしまいます。このように、トレードオフを許容させる力が組織に対して自然と働きます。

この力を認識し抗うには「そのトレードオフが発生しないようなオプションXがあるんじゃないの」と指摘してくれる人が多い環境に身を置くのことが一番の近道であると考えます。 自分自身だけでこれを徹底することはなかなか難しいのではないでしょうか。

まとめ

意思決定はオプションで考える必要がありますが、そこには「トレードオフに逃げる」という罠があると考えます。 残念ながら普通の意思決定からは普通のプロダクトや事業しか生まれません。エムスリーでプロダクトや事業を創出してきたメンバーは皆、この罠を回避することを徹底しています。 そういったスタンスを独力で身につけることは難しく、既にそれを持っている人が多数いる環境に身を置くことが一番の近道ではないでしょうか。

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