エムスリーテックブログ

エムスリー(m3)のエンジニア・開発メンバーによる技術ブログです

エムスリー執行役員VPoE兼PdMの山崎が、エンジニア、QA、デザイナー、プロダクトマネージャーにお薦めする良書7選

こんにちは。最近、お掃除職人きよきよ*1というYouTuberにハマってしまい掃除に明け暮れ、近所のドラッグストアでドメストとパイプフィッシュの原材料が同じことなどを知って、ふむふむと楽しんでいるエムスリー執行役員兼VPoE兼PdMの山崎です。薬剤を活用した掃除はDr. STONE*2気分で面白いですね。

本ブログはエムスリー Advent Calendar 2021の25日目の記事です。

エムスリー Advent Calendar 2021の締めとして、今年も「VPoEとしてこの◯年間を振り返って」シリーズで2021年を締めくくろうかとも思ったのですが、先日fukabori.fmの第59回第60回でしっかり語ったのと、流石に3年連続でやっていて4年目も同じネタだと皆さん飽き飽きするかなとも思ったので、本日は新企画として「エムスリー執行役員VPoE兼PdMの山崎が、エンジニア、QA、デザイナー、プロダクトマネージャーにお薦めする良書7選」ということでやっていきたいと思います*3

qiita.com

はじめに

特に順序に意味はなく、お薦めする良書7選を選んでみました。多数のジャンルから選んできたので選考過程で惜しくももれた良書もありますが、そちらは登壇などまたの機会で紹介したいと思います。それではさっそく行ってみましょう!各本の紹介には(アフィリエイトIDの埋め込みなしで)Amazonへのリンクを張っておきますのでよろしければどうぞw。

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ロナルド・A・ハイフェッツのリーダーシップとは何か?が廃版なので中古で買ったら、なんと幸田シャーミンさんのサイン入りだった件

1. 最難関のリーダーシップ ― 変革をやり遂げる意志とスキル

といいつつ、毎年紹介している「最難関のリーダーシップ」からのスタートです笑。fukabori.fmの第59回でも紹介させて頂きましたが、課題には、すでに対応方法が確立している技術的問題(テクニカル・プロブレム)と、自分自身が問題の一部になっており自分たちの価値観を更新しないと解決が難しい適応課題(アダプティブ・チャレンジ)があるという考え方は、今年もエムスリーのプロダクト開発組織やビジネス組織をリードするにあたって、大いに役に立ちました。大学教員であるハイフェッツが書いている本なので翻訳の仕方を含めてやや読みにくいところはあるのですが、内容は素晴らしいので今年もしつこくお薦めさせて頂きます。

ちなみに時系列的に逆順なのですが、最難関のリーダーシップをマスターした皆さんにはロナルド・A・ハイフェッツの以下の2冊もオススメです(販売順はリーダーシップとは何か!→最前線のリーダーシップ→最難関のリーダーシップですが、逆に読んでいく方が理解しやすいと思います)。

2. ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム

こちらもおなじみですね笑。マッキンゼー賞に輝いた伝説の論文「イノベーションのジレンマ」を執筆したクレイトン・M・クリステンセンが書いた超良書で、私は発売直後の2017年10月に読んでそれまでの理解がちゃんと言語化されていることに感銘を受けました。特に初期段階ではイノベーションのジレンマに陥らないような開発プロセスや組織設計をテーマとしていたクリステンセンが、デザイン思考的考え方に融合した点が面白かったです。個人的には、2015年8月にエムスリーデジカルをリリースして、その2年後に発売されたので、私達の開発スタイルが一応世界最先端であったことが確認できて安心しました。最近はプロダクト開発の分野でも多く引用、紹介されているような気がするのでおなじみかもしれません。

ちなみに、やはりクレイトン・M・クリステンセンといえば「イノベーションのジレンマ」シリーズは必読なので、問題提起の「イノベーションのジレンマ」、その解決策を具体的に提案した「イノベーションへの解」も貼っておきます(イノベーションへの解を読んでもっと知りたいと思った方には「イノベーションの最終解」もオススメです)。

さらにちなむと「イノベーションのジレンマ」の原題は「The Innovator's Dilemma」であり、日本語版も「イノベーターのジレンマ」にしてあげたほうが意味がパキッとした気がします(でもこっちだと売れなかったかもしれないので難しいところですね)。

3. デザイン思考が世界を変える イノベーションを導く新しい考え方

こちらも毎回紹介している気がしますが、デザイナー版プロフェッショナルファームIDEOのCEO兼社長、ティム・ブラウンが書いたデザイン思考の超良書。原題は「How Design Thinking Transforms Organizations and Inspires Innovation」。「デザイン思考で組織を変革しイノベーションを加速する方法」みたいな感じですが、ニーズを需要に変えるなど、本質的にはジョブ理論と通じるコンセプトが書いてあります。ジョブ理論は比較的ビジネス寄り、こちらは比較的クリエイター寄りなので、まずは好きな方から読んでみて、もう一冊が驚くほど似ているコンセプトであることを確認するのが良さそうです。

ちなみに時系列的にはデザイン思考の方が早く、教育現場でも2004年設立のスタンフォード大学d.school(ハッソー・プラットナー・インスティテュート・オブ・デザイン)など、歴史があります。

さらにちなむと、下記の「まんがでわかるデザイン思考」はめちゃくちゃよく出来ているので、サクッと読みたい方にはこちらをお薦めします。

4. INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメントシリーズ

ようやく出ました、自称エバンジェリストさせて頂いてる「INSPIRED」シリーズ。もはやプロダクト界隈では説明不要と思われる不屈の名作。確か臙脂色の第一版がエムスリーデジカル開発中に発売されて、読みながら「それな」を連発した覚えがあります。いやー私は言語化が苦手な方ですし、自分が本を書かなくても言いたいことは全部本になっているので、やっぱり私は本を書く必要はなく、こうやって良書を紹介するのが一番いいなと思う次第です(おそらく原理的にはシリコンバレーを代表とするプロダクト界隈をウォッチしながら工夫していれば、それがそのうち本として発表されるという単純な話かと)。書籍の内容についてはもはや紹介する必要が無いと思うので割愛しますw。

ちなみに以前、とあるメンバーに「山崎さんって長島茂雄みたいなタイプですよね、ぱっと考えて、がっとやるとかそういう表現が…」と言われたことがありますが、確かにその通りだな…と思う今日この頃。

さらにちなむと、最新作「EMPOWERED 普通のチームが並外れた製品を生み出すプロダクトリーダーシップ」も超良書です。このサブタイトルの「普通のチームが並外れた製品を生み出す」というのがプロダクトマネジメントの本質を表していると思います。正しいプロダクトマネジメントを行っていれば「必ずしもスティーブ・ジョブズが居なくてもヒット製品は生み出せる」というのが、今日紹介している本、全体に共通するコンセプトかな、と思います。

5. コミック版 100円のコーラを1000円で売る方法シリーズ

ここからは社内では紹介していますが、あまり社外には紹介していなかった良書を紹介していきます。まずはこちら「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズ。原作は小説ですが、コミック版も良く出来ているので今回は読みやすさを考慮してコミック版を紹介します。ネタバレしない程度に内容を紹介すると、システム会社のバリバリの営業、宮前久美と、その先輩、与田誠の名コンビがマーケティング理論を通じて、デスマーチを避け、会社を大きくしていくストーリー。マーケティング理論の本かと思いきや、それだけでなく、良いプロダクトを生み出すための開発プロセスや顧客価値の創造まで言及しており、プロダクト開発職種必須の良書となっています。

ちなみにそれもそのはず、原作者の永井孝尚さんは元日本アイ・ビー・エム株式会社ソフトウェア事業部SWGイネーブルメントマネジャー。バリュープロポジションに基づいたマーケティング施策の推進により、日本市場シェア1位と市場認知度1位獲得に貢献した人物だそうで、ソフトウェア開発、マーケティング、販売のプロだった、というわけです。

さらにちなむと、コミック版も3部作なので下記の2冊も一気に読んじゃってください(小説版も3部作)。

6. マンガ 餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?シリーズ

こちらもあまり社外では紹介していませんでしたので紹介します。公認会計士、林總さん原作の「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?」シリース。こちらも原作は小説版ですが、とっつきやすいマンガ版をお薦めします。こちらもネタバレしない程度に内容を紹介すると、父親の遺言によりアパレル会社「ハンナ」社長に就任した主人公、由紀が、借金まみれの泥舟になっていた会社を謎のコンサルタント安曇教授と立て直す、というストーリー。商売の基本をわかりやすく紹介しており、会計の基礎知識だけではなく「会社というのは本質的に原料としてお金を入れると、更に大きなお金が出てくる現金製造機」という考え方は私の働き方に大きな影響を与えました。プロダクト開発職種の皆さんには、是非、プロダクトのビジネス的な側面から見た本質とはなにか、この1冊を読みながら考えて頂けると良いのではと思います。

ちなみにこの本、同じコンセプトでしつこく3冊出版されており、毎度毎度、由紀がピンチに立たされ、安曇教授のアドバイスを経て、人間としても成長し、ハッピーエンドというベタな展開。水戸黄門的なコンテンツが好きな方は全部いっちゃってください(もちろん私は全部読みましたw)。

7. 未来を変えるためにほんとうに必要なこと――最善の道を見出す技術

ようやく7冊目まで到達しました。7冊目はこちらアダム・カヘンの「未来を変えるためにほんとうに必要なこと――最善の道を見出す技術」を薦めたいと思います。2010年日本語版発売と最新作という感じではないのですが、私は最近読んで、書いてあることは今でも通じる良書だと感じました。本書は、南アフリカの民族和解をはじめ数々の社会変革を導いてきたアダム・カヘンが、人と人の関係性を大きく変え、ともに望ましい未来をつくりだす方法を語った一冊ですが、原題は「POWER AND LOVE -- A Theory and Practice of Social Change」、つまり「力と愛、社会変革の理論と実践」であり、こちらの方がタイトルとして直接的でわかりやすいかなと思います。

さらに具体的に内容を紹介すると、冒頭で引用されているマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの言葉「What is needed is a realization that power without love is reckless and abusive, and love without power is sentimental and anemic.」*4、つまり「必要なのは、愛なき力は無謀で乱暴であり、力なき愛は感傷的で貧弱であるという認識である。」という言葉の、変革におけるその意味を1冊の中で深く論じています。個人的には「愛なき力は暴力であり、力なき愛は無力である。」と意訳したほうがエッセンスとしてはわかりやすいと感じていますし、プロダクト開発文脈でもプロダクトマネージャーに必要な力と愛の理解(例えばイノベーティブなアイデアと既存のマーケットの要求をどうバランスさせるか、とか、良いプロダクトとプロモーションの関係性とか)について大変参考になる1冊でした。

ちなみに、学習する組織で有名なMITスローンスクールのピーター・センゲも本書を推薦しているのですが、たしかにシステム思考と通じる部分もあり、ピーター・センゲの推薦もうなずけるなと思いました。

さらにちなむと、私の中では「良いプロダクトがない強いマーケティングは暴力であり、強いマーケティングのない良いプロダクトは無力である」という名言?迷言?も誕生しました。

おまけ. 「一緒にいたい」と思われるリーダーになる。――人を奮い立たせる50の言葉

最後におまけです。先日、Twitterを眺めていると、弊社卒業生の@m_nishibaさんが、以下のようなツイートを投稿していました。私も早速購入し読んでみたら、大変良い書籍だったので紹介しておきます^^。個人的には帰り道に川や犬が小さくなっていることで、彼らの成長ぶりを表現しているところや、王冠を友人に渡すシーンなどが、本質をついていてお気に入りです。

まとめ

いかがだったでしょうか?

エムスリー Advent Calendar 2021の締めとして何を書こうか色々と迷ったのですが、今回は昨年までと一新して、「エムスリー執行役員VPoE兼PdMの山崎が、エンジニア、QA、デザイナー、プロダクトマネージャーにお薦めする良書7選」と第して2021年を締めくくりました*5

結局、現在12/25 18:00近くと休日返上でギリギリまで執筆していたのですが、まだまだ紹介したい多くの良書をすべて紹介しきれなかったことが残念です。とはいえ、プロダクト開発で世界を変えようとしている読者の皆さんに、少しでも参考になれば幸いです。@yamamutekingのフォローもお忘れなく。本ブログのツイート、RTも歓迎しています。コメント付きRTで是非感想をお寄せください。

ということで、メリークリスマス!そして良いお年を!

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*1:https://www.youtube.com/channel/UCOb2mSJVXt_Aw2pAyj3Glgw

*2:https://ja.wikipedia.org/wiki/Dr.STONE

*3:例によって結局12/25当日まで準備出来ずに、当日残り時間をきにしながら書いています

*4:http://www.hartford-hwp.com/archives/45a/628.html

*5:実際には7選どころではないw