エンジニアリンググループの水野です。
サービスのUX改善活動の一環で、ユーザーのサービス利用頻度・利用の質と利益との関係を計測した際に気づきがあったためご紹介します。
チームの概要
私たちのチームでは主に、医療系ポータルサイトであるm3.comのメディア系のサービス開発を担当しています。担当しているサービスの中には直接的に収益を産むわけではないサービスもありますが、知識を得る、診療に役立つ、または楽しんでいただける価値をユーザーに提供し、収益を生む別のサービスも利用いただくことで間接的に収益を生み出しています。
チームの課題感
古くから動いているサービスも多く、UXにはまだまだ課題が多くあります。「デザインを重視する企業の株価成長率は高い」、「ユーザーファースト」などとよく言われますが、実際にUX改善の効果を数値化し評価することは難しいと感じます。
利益を優先すると、UI/UXはしばしば後回しになりがちです。それはUI/UXの向上が利益にどう結びつくか一見分かりにくいことが原因です。つまり、UI/UXの効果を定量的に示し、他の施策と比較可能な形で説明できなければ、UI/UXの向上に取り組みにくい場合があります。
したがって、提供価値を最大化するUI/UX改善を絶えず進めるために、その効果を定量的に計測できるようにすることが重要であると考え、今回UI/UXと利益の関係を分析してみました。
あるサービスに関する分析
チームでは、ユーザーへの提供価値を最大化しイケてるサービスにするために、ユーザーのニーズと体験、その評価を可視化すること、またそのための組織やプロセス構築、プロダクト開発を進めています。
その活動の一環で、あるサービスで、サービスの利用頻度・利用の質*1とNPS*2、利益との関係を計測した結果、次のようなことが分かりました。*3
サービスの利用頻度と利用の質の計測結果
- ライトユーザーに比べ、ヘビーユーザーは1.42倍利益が高い
- ライトユーザーのうち、サービス利用の質が低いユーザーに比べ、高いユーザーは1.21倍利益が高い
- ヘビーユーザーのうち、サービスを他者に薦めたいとは思っていないユーザー(批判者)に比べ、薦めたいと思っているユーザー(推奨者)は1.3倍利益が高い
- サービス利用者の平均的なユーザーに比べ、利用頻度&利用の質が高く、更に他者に薦めたいと思っているユーザー(推奨者)は8.43倍利益が高い
ユーザーが何に魅力を感じているか
またヘビーユーザーへのアンケートで次のことが分かりました。
- サービスを他者に薦めたいとは思っていないユーザー(批判者)は、特典を魅力に感じている人が比較的多い
- サービスを他者に薦めたいと思っているユーザー(推奨者)は、サービス自体の提供価値に魅力を感じている人が大半
仮説
上記結果から次の仮説が考えられます。
- 個々のサービスにおいて、ユーザーの課題解決や楽しさを追求すること、ユーザー体験を高めることが、m3.comや全体に最も利益をもたらす
- 特典は、来訪や定着化に一定寄与するが、サービス自体の提供価値に比べると利益への効果が低くサービスへの愛着や魅力には繋がりにくい
一見当たり前の事であるように思えますが、特に直接収益を生まないサービスにおいては実際に可視化されていないことも多くあります。本当にそうなのか、そしてどの程度そうであるのかを示していくことが大切だと考えています。
これから
私たちのチームでは、これまで以上にUX改善に力を入れていきます。 プロダクトの改善だけではなく、UX指標の定量的な計測手法・計測環境の構築、ブランディング強化などにも取り組んでいきます。
We are hiring!
エムスリーでは、フロントエンドエンジニア、UI/UXデザイナー、プロダクトマネージャー等の採用も強化しています。
m3.comは、既に国内の相当数の医療従事者に利用いただいていますが、ユーザー体験・サービスの質の向上による伸び代はとても大きいと感じています。巨大でレガシーな医療業界は変革の可能性に満ち溢れており、社会貢献度の大きい業界でユーザー体験をよりベターなものに、一緒に変えていける仲間を募集しています。