エムスリーテックブログ

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リスクを愉しむプロダクトマネジメント

こんにちは、エムスリーエンジニアリンググループの岩田です。 本記事はエムスリー Advent Calendar 2021 の21日目の記事です。

今回はプロダクトマネジメントとリスク管理について私見を述べたいと思います。
参考書籍は↓こちらです。

プロダクトマネジメントとリスク管理

プロダクトマネジメントではよく「仮説」という単語が出ますが、これはリスクと言い換えることができると考えます。基本的にプロダクトを作る以上、既存の正解がない領域に足を踏み入れる要素が多少なりとも含まれるのではないでしょうか。そういった未知の領域に踏み込むということは、リスクを取るということと同義と考えます。

プロダクトマネジメントにおける仮説思考については以下のスライドが非常に分かりやすくまとまっているので、こちらをご参照頂ければと思います。

仮説思考入門 🗺 スタートアップの仮説思考 (1) - Speaker Deck

リスク管理の実践

上記のスライドにもありますが、基本的にリスク管理は以下のプロセスで行われます。

  1. リスクの洗い出し・棚卸し
  2. リスク評価・エクスポージャー分析
  3. 対応策の検討
  4. リスク軽減策の実行

このプロセスを、なるべく素早く効率的に、必要なタイミングで繰り返す必要があります。 どの要素にも技術的な難しさや莫大な工数を要するものはありません。やればできるものだけです。

しかし、この単純なプロセスを怠ったが故に失敗してしまったプロジェクトは多数あります。 そのうちの1つにデンバー国際空港(以下、DIA)の自動手荷物処理システム(以下、ABHS)開発プロジェクトが挙げられます。

デンバー国際空港の事例

本プロジェクトの遅延はデンバー国際空港の開港遅延に繋がり、数十億ドルもの損失を出したとされています。そのような重要プロジェクトの責任者に関するいくつかの質問と回答が以下になります。

空港はなぜABHS無しで開港できなかったのか

ABHSありきで運用を組み立てていたから

ABHS無しでも回るような運用は組み立てられなかったのか

組み立てられたかもしれないが、ABHSが間に合えばその努力は徒労に終わるから、やらなかった

それまでソフトウェアプロジェクトが遅れたことはなかったのか

あったが、ABHSは大丈夫だと思っていた

プロジェクトチームは、遅れそうなことを上層部へ知らせていたのか

実はDIAが最初にABHSを入札にかけたところ、予定された納期で誰も応札しなかった。結局プロジェクトは開始したが、ベンダーは納期に間に合いそうもないことを再三告げていた。しかし仕様変更は後から追加され続けた。関係者は全員、4年かかるプロジェクトを2年でやろうとしているのであり、うまくいくはずがないと気づいていた。だが、こうした徴候は全て無視された

なぜ人はリスク管理を忌避するのか

上記のDIAの事例から、数十億ドルもの損失が出るような重要プロジェクトに於いても、実はシンプルなリスク管理プロセスすら行われずにリリース日を迎えてしまったことが分かります。なぜこのようなことが起きてしまうのか。それは人間がそもそもリスクを忌避する、見たいものだけを見る性質があるからと考えます。

カエサルによれば

人は喜んで自己の望むものを信じるものだ

フランシス・ベーコンによれば

人間は、ある意見を、そうだと思いこむと、すべての事がらをその意見にあわせ、その意見が正当であると主張するのに、都合が良いように寄せ集めるものだ。

とのことです。数千年前から続く人間の性質なので、一朝一夕でこれを完全に克服することは難しいでしょう。

リスクを愉しむTips

人はリスクを忌避する性質があります。しかしプロダクト開発においてリスク管理は不可欠です。
自分自身のリスクを忌避する性質を抑え込むために個人的に実践し有用だと感じたTipsや考え方を以下に紹介したいと思います。

負っているリスクが少ないこと自体が最大のリスク

ビジョナリー・カンパニーでは、今もなお世界的に有名な大企業の共通点として、会社の命運を左右するような重要プロジェクトを常に複数持っているとされています。

ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則 | ジム コリンズ;ジェリー ポラス, 山岡 洋一 | ビジネス・経済 | Kindleストア | Amazon

このようなプロジェクトには必ず何かしらのリスクが伴います。そのようなリスクがゼロ、または非常に少ない場合、そもそもそのような重要プロジェクトが実行できていない、企画されていないという別のリスクを抱えることになります。

リスク管理と風呂の類似点

半分くらいの人には理解されないのですが、お風呂は入るのが一番めんどくさく、入ってしまえばスッキリすると感じています。リスク管理もこれと似ているところがあり、リスクの棚卸し前は非常に憂鬱な気持ちになるのですが、いざ始めてしまえばリスクがコントロールできているというスッキリ感が得られます。
憂鬱さを押し殺し、とにかく始めてしまうことが風呂でもリスク管理でも肝要であると考えます。

不安を共有する

リスク管理を一人でやることはオススメできません。リスクや不安を一人で抱え込むことそれ自体が、事業上やメンタルヘルスケア上のリスクを増大することに繋がりかねません。週次の会議体や1on1などをうまく活用し、自分が抱えているリスクを誰かに共有しておくことをオススメします。

まとめ

プロダクトマネジメントとリスク管理には密接な関わりがあります。リスク管理のプロセス自体は至ってシンプルですが、人は自然とリスクを忌避する性質があるため、実践は意外と困難です。
リスクを忌避する性質をいかに制御できるかが肝要です。そのための考え方やTipsを持っておくことが重要であると考えます。

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