こんにちは! AI・機械学習チームの氏家(@mowmow1259)です。 エムスリー福岡オフィスの一人目のエンジニアとして福岡で働いています。 本稿はエムスリーAI・機械学習チームで2週間連続で行われるブログリレー3日目の記事となります! 2日目の記事も是非ご覧ください。
さて、この度、エムスリー株式会社は8/6〜8/9に熊本で開催される第27回 画像の認識・理解シンポジウム(以下、MIRU)にシルバースポンサーとして参加させていただきます! 皆様の研究発表から刺激を受けるとともに、弊社の臨床画像分野での研究の取り組みをご紹介することで医療分野での実応用の知見などを共有できたらと考えています。 8/7〜8/9にかけて3F大会議室A S6でポスターを展示しておりますので、研究に興味のある方はもちろんのこと、エンジニアリングや弊社エンジニアの働き方に興味がある方も是非ブースへお立ち寄りください!
また、ブログリレー1日目の記事を見てくださった方はお気づきかと思いますが、こちらでご紹介したQuineクリアファイルをノベルティとしてプレゼント予定です! 先着順ですので、お求めの方はお早めにブースにお越しください!
この記事では、MIRU2024の企業展示に先立って、ひと足先にポスターで展示予定の弊社の研究内容をご紹介できればと思います。
MIRU2024とは
MIRUは下記引用のとおり、画像処理分野の国内最大規模の会議であり、近年では1000人を超える規模で研究発表、議論が行われています。
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU)は、画像の認識と理解技術に関する国内最大規模の会議です.大学/産業を問わず,研究者,技術者,そして次世代を担う学生の議論・交流の場であり,基礎から応用まで最新の研究発表と討論の場です.
私自身も過去MIRUに参加させていただいており、非常にレベルの高い発表、議論に刺激を受けています。
エムスリーでの臨床画像分野の研究取り組み
そんなMIRU2024において、弊社ブースではエムスリーで取り組んできた臨床画像分野への応用研究をご紹介する予定です。
臨床画像分野での応用ってどんなもの?
そもそも臨床現場で機械学習はどのような活用方法があるでしょうか?
それは、医療・医学に貢献するという大目的のもと、ある画像に対して「医師の診断を模倣する」「画像を別形式に変換する」「未来の事実を予測する」3つの活用方法に大きく分けられます。 例えば、胸部X線画像から肺がんかどうかを検出する機械学習モデルは「医師の診断を模倣する」ものであり、そのモデルの出力で医師の診断を支援することで肺がんの見落としの削減につながる可能性があります。 画像と一言で言ってもマンモグラフィ、X線、眼底画像と多岐に渡りますし、各診療科や疾患に固有の課題もあり、まだまだ応用の余地のある分野です。
臨床AIの概要については次の記事によくまとまっていますので是非ご覧ください!
エムスリーでの研究事例
そんな臨床画像分野において、エムスリーが取り組んできた研究を3つ紹介します。
研究1:胸部X線からの薬剤性間質性肺炎の検出システムの評価
エムスリーが開発した薬剤性間質性肺炎を検出するシステムについて評価実験を行った研究です。 先ほどの分類で言う「医師の診断を模倣する」ものです。
薬剤性間質性肺炎は抗がん剤や関節リウマチ治療薬などを投与することにより発症する間質性肺炎です。 この疾患は胸部X線などによる早期発見、早期治療が重要であるものの、初期治療にあたる非専門医にとってその診断は容易ではありません。
そこで、胸部X線から薬剤性間質性肺炎を検出するモデルを構築し、そのモデルの出力を医師が参照することで実際に診断が改善されるか評価実験を行いました。 その結果、特に非専門医についてROC-AUCが統計的有意に改善することを示しました。 特異度を保ったまま感度が改善しており、このモデルの出力を参照することで薬剤性間質性肺炎の診断の見落としを減らせることが期待できます。
このモデルはBMAXというシステムとして実用化されており、実際に臨床現場に導入されています。
こちらの記事で詳細に紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。
研究2:胸部X線画像からの肺動脈性肺高血圧症の検出
この研究では、肺動脈性肺高血圧症を胸部X線から検出するモデルを構築し、機械学習による診断支援の可能性を示唆しました。 こちらも「医師の診断を模倣する」ものです。
肺動脈性肺高血圧症は国指定難病の1つである希少疾患です。 適切な治療のためには早期診断が必要なものの、その患者数は100万人に50人程であり、その希少性からしばしば見落とされ結果として診断が遅れています。
そこで、胸部X線から肺動脈性肺高血圧症を検知するモデルを構築し評価実験を行いました。 構築したモデルは、肺動脈性肺高血圧症の患者と肺疾患のない患者の胸部X線画像を医師と遜色なく識別できることを示しました。
また、こちらの研究は次の記事でもご紹介していますので、是非そちらもご覧ください!
研究3:治療の副反応として起こる皮膚疾患のリスク予測
この研究では、抗がん剤の副作用である手足症候群の発症可能性の予測を試み、今後の発症予防に対する応用可能性を示唆しました。 こちらは「未来の事実を予測する」研究になります。
手足症候群は抗がん剤を投与した場合に発症する可能性がある皮膚疾患で、手や足にしびれや痛み、腫れなどが起きてしまうものです。 手足症候群に有効な治療法は確立されておらず、発症前から軟膏を外用するなどして予防することが大切です。 しかし、発症を予見することは難しい上に全患者に予防措置を徹底することも困難です。
そこで、抗がん剤投与前の患者の背景情報や手足画像から、抗がん剤投与後に手足症候群を発症しやすいかを判定するモデルを構築しました。 その結果、一定の精度で発症可能性を予測できることを示しました。またデータ量と比例して性能が向上していることも示し、今後データを増やすことで性能を向上させられる可能性を示唆しました。
詳細はこちらの発表概要から、もしくは次の記事で詳細をご紹介していますので、そちらをご参照ください。
まとめ
ここではMIRU2024で展示予定の、エムスリーの画像処理分野での研究への取り組みを紹介しました。 MIRU2024ではこの記事でご紹介した研究はもちろん、エムスリーでの機械学習エンジニアの働き方や事業へのMLの適用例などもお話しできればと思っています。 この記事を読んで興味が湧いた方は是非当日ブースへお立ち寄りください!
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