エムスリーエンジニアリンググループ製薬企業向けプラットフォームチームの三浦 (@yuba)です。社内のエンジニアLT大会「Tech Talk」でもたまに発表を出しておりますが、学問的に深かったり技術的に最先端だったりするわけではなくウケ狙いのLT専門です私は。今回もそんな気軽な発表を一題やりましてその録画が公式チャンネルで公開になりましたので、息抜きにお気楽にお楽しみくださいませという無邪気なご紹介になります。
どんな話
ローマ字をカスタマイズして入力速度を高めよう! というアイデアに自分がいつどこで出会ったのだか、もうまったく思い出せません。20年以上前のことですし。ただ、その出会ったというのが何に出会ったのかというとはっきりしていて、木村清氏提唱のAZIK*1です。一読して感動しましたよ私は。
言われてみればその通りだ、子音→母音→子音→母音→... と交互に叩く中で、母音のフェーズではa,i,u,e,oの5種類のキーしか選択肢がなく残りの21種類は遊んでいる、ということは素のローマ字は情報密度が低いってことだ! とすんなり理解できて一発でAZIK派になりました。 そのAZIKの紹介と、AZIKを拡張して君だけの最高を目指そう! って発表です。
忙しい人のために3分で
まず、AZIKの発想のご紹介。上で書いたとおり、これは母音フェーズの最適化なのです。
- 母音フェーズで遊んでいるキーには、二重母音やそれに類する音を割り当てる
- 二重母音は「あい」「うう」「えい」「おう」。それに類する音とは、「あん」「いん」「うん」「えん」「おん」。それぞれ、Q,H,W,P,Z,K,J,D,L に割り当てる。
(これら、覚えるのは難しくないんです、「Q:あい」「Z:あん」はAのすぐ隣、という風な配置なので) - これに、子音フェーズの拡張として「Q:ん」「;:っ」「X:シャ行」「C:チャ行」を加えればだいたい完成
- このほかに、まだ母音フェーズに遊んでいる子音キーを使って「DS:です」「MS:ます」などの特殊拡張を加えていく
そしてそこからが楽しい。
この拡張定義を自分でポチポチ打ち込んでいくうちに誰でも必ずうずうずしてくるんですよ。「もっと良い拡張入れたくなっちゃった」って。
私の場合は、まず二重母音類の追加から入りました。「X:ょう」「V:ゅう」
この拡張、効くんですよ実際に文章打っていて。だから、過去に私が配布していたATOK用AZIK定義ファイル*2にもこの拡張が入れてあります。
母音フェーズは今こうなっている
今回発表したAZIK+独自拡張で母音フェーズはどのくらい充実した状態になったかというと、次のようになっています。
key | 機能 | key | 機能 | key | 機能 |
---|---|---|---|---|---|
A | あ | K | いん | U | う |
B | AZIK特殊拡張用 NB:ねば etc. |
L | おん | V | ゅう |
C | AZIK互換キー DCI:でぃ DCU:どぅ |
M | AZIK特殊拡張用 TM:ため DM:でも etc. |
W | えい |
D | えん | N | AZIK互換キー (Zと同じ=あん) |
X | ょう |
E | え | O | お | Y | 拗音 |
F | AZIK互換キー KF:き HF:ふ etc. |
P | おう | Z | あん |
G | AZIK互換キー (Yと同じ) |
Q | あい | ; | 連打相当 D;:でん K;:きん etc. |
H | うう | R | AZIK特殊拡張用 NR:なる DR:である etc. |
, | あく |
I | い | S | AZIK特殊拡張用 DS:です MS:ます etc. |
. | おく |
J | うん | T | AZIK特殊拡張用 HT:ひと WT:わた etc. |
- |
「互換キー」というこれまでの解説に出てきていない用語がありますが、この辺はAZIK公式解説の方をご覧ください。AZIKは単に打鍵数を圧縮するだけでなく、指が回りにくいところを互換キーで早打ちできるようにするというアイデアも入っているのです。
裏話
発表の後半では、素のローマ字と上位互換でなくなってしまっているところを直して常人にもそのまま使えるキーボードにする、っていうトピックがあります。
実は、これのうち「ナ行をQで打つようにする」はこの発表の準備してるときに思いついてその場で手元のローマ字設定に実装したものです。
そして同じく発表の最後の方で今後の課題としていた「あく」「おく」もしれっと「,」「.」に割り当て済みです(上の母音フェーズ表にもう入っていますね)。
20年来慣れきったAZIKからナ行と単独「ん」の入力方法が変わるので結構指が混乱したんですけどね、負けるかってそのまま慣らしを続けています。
「なのです」が「QAQODS」なんてなって左小指を酷使するのだけど、容赦はしない。頑張れ小指。「Q;」で「ない」みたいな頻出パターンは1日で指に染みついてくれたので時間の問題でしょう。
「遊んでいるキー」
チームの同僚からはこんな感想をもらいました。 まあそりゃ、普通に生きていて「遊んでいるキー」という言葉を使うことも聞くこともないはず⋯
ところが、その月のうちに我々はまたこのTech Talkで「遊んでいるキー」という言葉を散々聞く羽目になるのです。
もし動画公開されたときにはそのLTのこともご紹介しますね、Karabiner Elements*3をいじくり倒そうという発表。一生分聞いたってのにたった2週間で人生2周目突入か。
いわく、キーカスタマイズツールに状態を持たせることができるんですと⋯? それ、もしかして応用すればローマ字カスタマイズにもさらに幅が出るかも⋯? まだ具体的なアイデアはありませんが夢が膨らみます。
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こういうおもしろおかしいだけの話とかもやっていますので、ちょっとついて行けないんじゃないかみたいに怖じ気づかないでTech Talk、冷やかしにおいでくださいませ!
参加の仕方は簡単、下のリンクの募集ページの「カジュアル面談はこちら」で「参加を希望するイベント」のところからTech Talkを選べます。Zoomでやっていますからおうちから入れます。面談じゃないからこわくありません、Zoomのチャットでリアルタイムコメントしたり質疑応答したり、一緒に楽しくLT聴いて盛り上がりましょう。
*1:http://hp.vector.co.jp/authors/VA002116/azik/azikinfo.htm AZIK総合解説書
*2:https://www.vector.co.jp/soft/win95/writing/se165325.html Vector ATOK12~15用AZIK設定ファイル
*3:Mac用のキーカスタマイズツール