エムスリーテックブログ

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ホームランバッターと同じ環境で働けると何が嬉しいのか? - "アイデアこそ全て"症

こんにちは。エムスリーでプロダクトマネージャーとして働いている岩田(@a___iwata)です。

最近、弊社山崎が各所で「ホームランを打つ」ということについて言及しています。

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エムスリーでは「ホームラン」と呼べるような事業が多数立ち上がっています。 最近では、後払いによる会計待ち時間ゼロ、使いやすい予約と問診、QRでのチェックインといったスマートな診療を実現するデジスマ診療が例として挙げられます。

digikar-smart.jp

ここでは、そんなホームランを打てる人が多数在籍している環境に身を置くことでどんなことが分かったのかを振り返っていこうと思います。 ホームランバッターと同じ環境で働けると何が嬉しいのか? という問いの答えになれば幸いです。

ホームランを打つ、とは何か

ここでは「年間50億円以上の利益を創出できるプロダクトをリリースすること」とします。
エムスリーではこれがベンチマークとされることが多いです。

"アイデアこそ全て"症

私がプロダクトマネジメントへ本格的に取り組み始めたのは2017年頃(エムスリー入社が2019年)なのですが、 おそらく3〜4年もの間、この病気に罹患していました。

プロダクトマネジメントに関わる人であれば誰しもアイデアの重要性は認識していると思います。世界中で使われているどんなプロダクトも、最初は誰かのアイデアから始まっています。
誰も思いついていないような革新的なアイデアは世界を救う→ジョブ理論だ! デザイン思考だ! という理屈自体は間違っていません。

しかしアイデアを考えるということは全体のスタート地点に過ぎません。
さらに言うなら、私含め多くの人が思う「アイデア」自体、プロダクトを作るために考えなければならないことが欠落していることが非常に多いと考えます。

良いプロダクトは、自然に広まる ---- 本当に?

新しいプロダクトのアイデアを立て、そのアイデアがうまく行かなかった時を考えてみます。 当然プロダクトマネージャーはがっかりし、反省します。次こそはと思い、何がいけなかったのかを考えます。 そして「アイデアがダメなんだ。もっとシャープなアイデアを」という結論に至り、ジョブ理論やデザイン思考の書籍を読み直します。

一見すると何も問題がない行為に見えますが、実はここに大きな落とし穴があります。 そもそも売れなかった原因はプロダクトのアイデアにあったのでしょうか。
「優れたアイデアであれば、何もしてなくてもプロダクトは爆発的に広まっていくはずだ」と無条件に信じ込みすぎてはいないでしょうか。

確かにプロダクトレッドグロースに関する記事を見たり、創業期のFacebookのエピソードを読むと、提供者側が何もしなくても口コミやSNSで勝手にプロダクトが使われていくように思えます。
実際、そういったプロダクトはたしかに存在します。

私もそうしたエピソードをよく目にしてました。それ故に、うまく立ち上げられなかったプロダクトについて、「もっとユーザーに”刺さる”プロダクトでないとダメなんだ」と反省していました。 しかしどう逆立ちしてもそういったプロダクトのアイデアが考えつかず、自分にはプロダクトマネージャーなんて向いていないのではないかと苦悩していました。 同様の苦悩を持つプロダクトマネージャーの方は多いのではないでしょうか。

プロダクトのアイデアだけではなく、"世界観"を考える

そんな苦悩をしていたときに、冒頭取り上げたデジスマ診療の製品要求仕様書(PRDと社内では読んでいます)を読んでみました。

その瞬間「あぁこれ売れるな」と確信が持てました。と同時に、以下の2つのことに気が付きました。

1. "世界観"をそもそも作っていなかった

今まで自分は「プロダクトがどのようにユーザーの生活に浸透するのか」「どのような力がその浸透を後押しするのか」「プロダクトを目にした人がまずどのような行動を取るか」「フット・イン・ザ・ドアは何か」といった、プロダクトをリリースした後の想像やシミュレーションが圧倒的に足りていなかったことを痛感しました。

プロダクトは様々な人の人生に影響を及ぼします。少し大げさに言えば、その人生に及ぼす影響や変化をよく考えること、それこそが”世界観”を考えることなのだと気づきました。 正直に言うと、山崎はよく”世界観”という言葉を使いますが、私はあまりピンと来ていませんでした。それがここでようやく理解できました。

2. ユーザーの琴線に触れるようなプロダクトの伝え方(コミュニケーションアイデア)は自明ではない

いわゆるプロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアを別々で考えるという発想自体が欠落していました。 考えてみればiPhoneという場外満塁ホームラン級のプロダクトも国によってコミュニケーションアイデアを使い分けます。それも1国に1つではなく複数のアイデアを出されていることも多いです。

iPhoneですら、コミュニケーションアイデアは試行錯誤をしています。どうして自分のプロダクトのコミュニケーションアイデアをもっと考えていなかったのかと反省しました。

プロダクトアイデアと世界観とコミュニケーションアイデアの3つをテストする

こうなると話しが変わってきます。これまで私はプロダクトを静的なものとして捉えすぎていました。 そのプロダクトがどのように人々へ浸透していくのかを良く考えずに「このプロダクトがうまくいかなかったのは、プロダクトのアイデアにキレがないからだ」と判断し、 プロダクトのアイデアを磨き込むために労力を割いていました。

しかしそうではなく、単に”世界観”を考えられてない、作りこまれていないことが失敗の原因となった可能性があります。

具体的には新しいプロダクトアイデアのテスト(アンケート、インタビュー、何でもいいです)が芳しくなかった時、

1.「このプロダクトはいらないのかもしれない」
2.「いやでも、このプロダクトが無くすペインは絶対あるはず」
3.「自然とプロダクトが伝搬していく”世界観”が弱いからか?」「コミュニケーションがうまくいってないだけか?」

といった考え方になります。この2→3へ至れるか至れないかは、かなり大きな差になると感じています。 今となっては、私がプロダクトのアイデアを考える時は"世界観"とコミュニケーションアイデアをセットで考えることが習慣として身体に染み付いてます。

まとめ - ホームランバッターと同じ環境で働けると何が嬉しいのか?

こうした学びを、すでに成功しているプロダクト及びそれの創出者以外から得ることは難しいと考えます。 失敗したプロダクトの製品要求仕様書と、自分のそれを見比べて差異を見つけたとしても、その差異がプロダクトの成否を左右するのかどうか判別不可能ではないでしょうか。

エムスリーでは「ホームラン」と呼べるような事業が多数立ち上がっています。 そうした環境に身を置くことで"アイデアこそ全て"症から回復できました。 この症状からの回復は、ホームランを打てる人が多数在籍している環境でなければ難しかったと感じます。

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