エムスリーテックブログ

エムスリー(m3)のエンジニア・開発メンバーによる技術ブログです

顧客要望に100%応えた商品が売れない理由とは?

こんにちは。 エムスリーエンジニアリンググループ、プロダクトマネージャーの岩田です。
今回は私が未経験PdMとしてエムスリーへ入社し、2年間奮闘した中で学んできた、顧客要望との向き合い方に関する話を書きます。

この機能が無いと買わないって言っていたから作ったのに...とか、なんで機能に劣る他社製品にウチが負けたのか..といったお悩みをお持ちのプロダクトマネージャーの皆様へ役に立つ情報を発信できればと思います。

参考書籍

この話は以下の書籍に書かれていることを参考にしています。 お時間があれば、ぜひご一読いただければと思います。

顧客要望に100%応えた商品が売れない不思議

今の時代、新しく商品開発をする際に顧客の声を一切取り入れないことはほぼ無いと思います。 アジャイル開発でもリーンスタートアップでもユーザーを巻き込んだ検証を繰り返すことが前提となっています。 新規開発の多くの場合、ターゲットとする顧客から様々な要望が寄せられ、開発チームはなるべくこれに応えるべく、必死に開発するのではないでしょうか。

しかし、こうして苦労して開発した製品が、なぜか売れないという事象が往々にして発生します。 この商品には、事前にヒアリングした様々な顧客要望を反映しているはずなのに。

なぜこういったことが起きるのでしょうか?

顧客要望に「うまく」応えられていないから、という誤解

この話をすると、「特定の顧客にしか役に立たないような機能を作ってしまったからではないか」「より多くの顧客に価値を届けられるような要求にフォーカスしきれなかったからだ」といった考えを持つ方も多いのではないでしょうか。要は顧客要望に「うまく」応えられていないことが失敗の理由、という解釈になります。 確かに、複数の異なる(ように見える)要求を1つの汎用的な機能で実現するという発想自体は正しく、むしろ王道でもあると考えます。

では本当に、顧客要望に100%「うまく」応えれば顧客は必ず買うのか、失敗の理由は「うまく」応えられなかったことなのか、と言い切れるのでしょうか。 意見が分かれるところではあると思いますが、私はそれだけで全て説明しきれるとは考えていません。

顧客要望の難しさ。当の顧客自身もよく分かっていない

私事になりますが、先日iPhone 13 Pro Maxを購入しました。 素晴らしいカメラ性能や洗練された見た目にとても満足しています。

しかし冷静に考えてみれば、この携帯に私は10数万もの金額を支払っていることになります。 しかもiPhone13には指紋認証がないためマスク着用時は不便ですし、動画再生やSNSくらいにか用途が無いのにA15チップは明らかにオーバースペックです。

このように、冷静に考えてみれば自分でも購入理由が完全には説明しきれない物は何かしらあるのではないでしょうか。 むしろ、そのような物の方が多いという方も少なくないと考えています。

顧客自らが発する顧客要望を100%満たしても商品が売れない理由は、どうもこの辺りにありそうです。 あえて言うなれば「顧客は自分自身が本当に欲しい物を完全には理解しきれていない」ということに尽きるのではないでしょうか。

顧客満足 = 顧客が感じた価値 - 事前期待値

商品開発時には顧客の声を取り入れなければならない、しかしその顧客要望に100%応えても売れるわけではない、顧客は自分自身が本当に欲しい物を完全には理解しきれていない。 これらの話を目にすると、「ではどうすればいいのだ」という気持ちになるかと思います。私自身もここに相当苦しみました。

本当に聞くべき顧客要望と、そうでない要望があるのか? それはどのように区別できるのか? 売れている製品ではそこをどのように区別してきたのか?
様々な事例を調べたり書籍を漁った結果、ようやくシンプルな考え方を見出すことができました。

それが↓です。

顧客満足 = 顧客が感じた価値 - 事前期待値

つまり、ある商品を目にした時に持った事前期待値を上回るような価値を提供して初めて顧客満足が0を上回ることになります。 事前期待、つまり顧客要望に応えても商品が売れないヒントがここにあると考えます。

顧客が思ってもいなかったようなこと、期待すらしていなかったような驚きを提供して初めて、顧客は満足し商品を買ってくれると言えるのではないでしょうか。 確かに、人が感動したり心を動かされる時には、予想もしなかったような驚きや良い意味での裏切りが必ずあると考えます。

2年もの間、PdMとして顧客満足について考えてきましたが、「え、こんなことができるの!?」「これだけで完結しちゃうの!?」という驚きこそが重要だと思うようになりました(あくまでも私のスタイルの話であり、一般的な法則であるとまでは言えませんが)

顧客満足の源泉、「驚き」をどう生み出すか?

とはいえ、「驚き」というのは誰も想像していなかったからこその驚きです。 それを人為的に作り出せと言われても途方にくれてしまうのではないでしょうか(私もそうです) 

しかしPdMとしてはここが踏ん張りところです。なんとかしなくてはいけません。

「驚き」を考えるヒントとして私が好むのはバリュー・プロポジションの考え方です。

http://valueprop.co.jp/wp-content/uploads/2019/04/Value-Proposition-100.jpg

この画像は下記から引用させて頂きました。 valueprop.co.jp

この画像にある「顧客が望んでいて、競合が提供できなくて、自社が提供できる価値」を提供するというのは大きなヒントではないでしょうか。 私自身も「エムスリーがこの領域に取り組むとして、エムスリーにしか出せない価値は何か」「その価値は顧客にニーズはあるのか」といった考え方をすることが非常に多くあります。

創業期のベンチャーであれば、創業者自身の強み、なぜ高いリスクを取って創業に至ったのか、といったストーリーなどが当てはまるのではないでしょうか。 大企業であれば、社内の様々な資産や他事業とのシナジーなどが当てはまりそうです。 このように、顧客が望む価値と、自社にしか無い提供できない価値がうまく重なる領域を見つけられると、顧客満足度が高まるのではないでしょうか。

まとめ

顧客満足を生み出すためには、顧客が期待もしていないような驚きを提供すべしという考えを私は持っています。 驚きを生み出すためには、自社にしか無い強みを活かすことがヒントになるかもしれません。

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