こんにちは。エンジニアリンググループ クオリティアシュアランス(QA)の窪田です。あっという間に時間が過ぎてしまっていることに焦りを感じています。今年度から採用にも関わらせていただいており、様々な施策を実施中です。今回は、ひょんなことから採用のためのペルソナを作成し、社内展開したところ、ポジティブな声が多く上がったため、ペルソナ作成の過程とその結果の例をご紹介したいと思います。
背景
今年度からデザイングループのGLに就任した古結から、デザイングループの紹介がありました。その中で知り合いにデザイナーがいたら紹介して欲しいといった話もあり、 資料 に、採用ペルソナが含まれていました。個人的に初めて見る手法でしたが、どんなデザイナーを求めているのかを想像しやすく感銘を受けました。後で調べてみたところ、最近よく使われている手法みたいですね。
その後、QAの採用活動を社内で広げる中、社内から、「募集条件等は提示しているけれどどのような人が求められているのかについて具体的にわかりにくい」といった声が上がってきました。確かにQA採用の人間はどのような人を採用したいといった意識を持っているものの全体に伝えていませんでした。そこでデザイングループの作成した採用ペルソナを真似して、自分たちがどういった人と働きたいのか、どのようなスキルやマインドセットが必要なのかを具体化すれば伝わりやすいのでは? と思い至ったわけです。
採用ペルソナ
採用ペルソナとは、採用したい人材を具体化し、ターゲットを明確にするものです。エムスリーの募集条件にも必須スキルや等の記載も書かれていますが、採用ペルソナはそれにとどまらず、対象者の「現在の職業」「考え方」「興味」など、人物像の具体化をしていきます。具体化によって、募集条件になっている一つ一つの条件や単語から連想されるものが担当者によって大きく異なること防ぐことが出来ます。また、就職活動をされている人から見てもペルソナと自身の共通点、相違点がわかるようになるため、面談や面接での質問などがスムーズに出来るなどの側面もあると考えられます。
採用ペルソナは以下の手順で作成していきます。
- 組織目標の明確化、採用によってどのような組織にするかの明確化
- チーム内ヒアリングなどでの必要な人材の明確化
- ペルソナの作成
- 関係者内でのすり合わせ
- 定期的な更新
組織目標の明確化
一緒に働きたい人材像は例えば募集条件は こんな感じ にホームページに掲載されていますが、どういった組織にしたいから、こんな人がほしいまでを示せていないなと感じました(そもそも募集条件でそこまで具体的に書かない?) ただ、どういった組織にしたいかはQAチーム内で明確に共有されています。我々が目指す品質保証は以下のものになります。
- 優れたテストの実施
- システム構成の理解、ドメイン知識、テスト技法やプラクティス等を利用したテスト設計
- スピードを落とさずに品質確保する
- テスト内容(プロダクトごとの手厚さ)やドキュメントの最適化
- 自動テストの積極的検討
- QA(システムテスト以降)実施前の品質を上げる
- 上流への積極関与:仕様書のレビュー、認識齟齬の防止、各テストレベルでのテスト
- チーム全員で品質を作り込む体制
- 優れたユーザ体験の提供
- 上流・企画への積極関与:UI / UX をエンジニア、プロダクトマネージャー、デザイナー とともに良いプロセスで作り上げる
これらを達成するためには、スキルももちろん必要ですが、これらを推し進める情熱があることなども必要になります。こういった前提から一緒に働きたい人材像を具体化して採用ペルソナとしていきます。
必要な人材の明確化
目標設定に合わせてどういった人材が必要かについてチーム内で話し合い、必要な人材を明確にします。チーム内でブレインストーミングを実施し、アイデア出しをしました。応募条件を満たす人ってどのような人だろうか、また、そのような人は実際にいるのかなど話して、条件を出していきます。ポジティブなポイントを挙げていき、MUST要件を挙げていきました。
- エムスリーで案件をこなせる
- テストスキルがある
- テストマネジメントができる
- ステークホルダーとの調整ができる
- 品質保証の何かしらのスペシャリストである(いずれか1つでも)
- 高度なテスト設計スキルがある
- 非機能系のテストが得意
- 自動テストのスキルがある
- テストマネジメントが得意
- プロセス改善が得意
- ユーザビリティ改善ができる
- 組織レベルでの品質保証体制の構築・改善ができる(将来的に出来るようになる素地がありそうか)
- エムスリーとマッチするか
- く・しゃ・み の行動規範へのマッチ
- クライアントに対する執着心
- 社長意識
- 皆をプロフェッショナルとして尊重
- ロジカル・スマートさ
- 数字に強い
- く・しゃ・み の行動規範へのマッチ
MUST な要件が上がった上で、そういった人もしくは、将来的に上記を満たしそうな人をペルソナとして作り上げていきます。
ペルソナの作成
ペルソナを作り上げていく上でその人が「どのようなバックグラウンドなのか」「どのようなことを考えているのか」など、の具体化していく項目を考えて行く必要があります。 ここはノウハウがなかったため、デザイングループで利用していた以下の項目を真似することにします。例を交えながら説明しますが、今回は SIer として働いている技術者をペルソナとして例示していきます。
- 名前
- 年齢
- プロフィール(バックグラウンド)
- 課題
- 達成したいこと
- 感情
- 代替手段
- 利用メディア
- スキル
名前
名前は社内で覚えてもらいやすくするためキャッチーな名前をつけてみようとブレインストーミングをしました。
年齢
年齢は、どれくらいのキャリアを持った人をターゲットとするかの上で重要です。エムスリーではMUST要件で示したとおり、品質保証に関わる業務を経験した人材をターゲットにしているため、自然とターゲットも20代後半以上の方が対象となってきます。今回はマネジメントの経験なども加味し30歳とします。
プロフィール
現在働いている職種、役割、学歴(専攻など)、を考えます。MUST要件を見ると、テストスキルが求められているため、テストに関わる経歴である必要があります。例えば、品質保証エンジニアなどが対象となります。また、社内では様々な技術が用いられているため、コンピュータサイエンスの素養があるとなお良いですが、技術が好きな人であればキャッチアップも可能かなと考えているため、技術好きであることを重要視する必要があります。今回の例だと、SI業界で品質保証担当のエンジニア、大学の専攻がコンピュータサイエンス、6年目くらいのリーダーを想定します。
課題
本人がキャリア形成上の問題点として何を意識しているかを挙げています。これはエムスリーで働くことにより解消される項目となります。 例えば、「ITスキルを更に向上させたいが、マネジメントの仕事ばかりになってきた」「広く浅い知識になっており、得意分野がない」などの課題を持っていたとします。エムスリーだと、マネジメントの仕事は多くなく、ほとんどのメンバーが創意工夫してテストを実施しています。やり方は基本的に自由であるためその中でスキルを伸ばしたり、得意分野を伸ばすことなども可能です。ということで、ペルソナとエムスリーはマッチングしていると考えます。
達成したいこと
今後、キャリアの中でやりたいこと、達成したいことを挙げます。直近の希望みたいなものを今回は挙げました。例えば、「最新の技術、テスト技術をキャッチアップしながら働く」「裁量の高い職場で組織の改善活動を主導する」などです。どちらもエムスリーで実践できる項目ですね。
感情
想定するペルソナがどのような感情を抱いているかを挙げます。自分の課題を重要視していたり、現実と達成したいことの乖離が大きければ不安感や焦燥感があると思いますし、逆に小さいと期待感等があるかもしれません。今回の例だと、なんでも屋になってしまっているという課題と現実と達成したいことの乖離の大きさから「不安:強みがなく、組織を離れたら何もできないかもしれない」「疑念:まだまだ成長できる方法はあるのではないか」などを挙げてみました。
代替手段
現状が変わらないものの、変えるためにどのような行動をとっているかを挙げます。今回の例だと、技術志向のタイプのペルソナであるため、技術関連の学習の実施や、情報収集は実施していると考えられます。そのため、「自己学習の実施、本はよく買う」「勉強会へ参加し、他社の状況を追う」などを挙げてみました。
利用メディア
その人がどのようなメディア(SNSなど)を使って対外アピールしたり、情報収集をしていたりするかを挙げます。今回の例だと、学習意欲はあるけれども対外アピールが少ない人になっているかなと想定していたため、情報収集のために Twitter、経歴を見せるために LinkedIn に登録していると設定しました。
スキル
スキルは実際に出来ることを無数に挙げていくことも出来ますが、今回はエムスリーQAとマッチしていてかつ、ペルソナの強みのスキルを挙げることにしました。「品質に関する計画を策定でき、計画を一人もしくは担当者数人をマネージしながら遂行できる。」「テスト技術の知識がある」のスキルを持っていることとします。
関係者内でのすり合わせ
ここまで迷わずペルソナを作っているように見えますが、実際はたたき台を作った後にチーム内で上記の議論をしつつ作成しています。事前に目標とする組織などの共有があったため、チーム内でのすり合わせを実施したときに大きくペルソナが変更になることがありませんでした。ただ、いくつか気をつけるべきポイントがあったため、その部分をメモとして挙げます。
- ペルソナと同様なバックグラウンドだと、個人の思いが強く出すぎて各項目が細かくなりすぎる
- ペルソナと全く異なるバックグラウンドだと意見が出辛い
ペルソナと同じバックグラウンドだと個人の思いが溢れてくるため、すり合わせの際に盛り上がります。各要素が盛りだくさんになりすぎないように抽象度を保つ必要があります。 また、ペルソナと違うバックグラウンドだと想像では限界がありました。そのため、想定するペルソナに似た実在の人を数人挙げて、その人の特徴などを議論しながら1つのペルソナを作り上げました。完全な想像に任せてしまうと、転職市場ないし現実にいない人を想定した活動となってしまいます。それは無駄な活動になってしまう可能性があるためその点は気をつけました。
QAペルソナの例
以上の作業から、4人分のペルソナを作成しました。このブログでは1人のペルソナを例を示します。
感想
簡単に書きましたが結構大変でした。叩きを作る部分は思った以上に時間がかかりましたし、ブレインストーミングも思った以上に意見が出たためまとめるのにも時間がかかりました。その甲斐あって具体的で求める人材を想像しやすくなったかなと思います。当面の採用活動では上記のペルソナを活用しようと思っています。組織の方向性が変わる度にペルソナも柔軟に変えていく予定です。
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