AskDoctors プロダクトマネージャーの江波です。
2017/11/14(火)・11/15(水)に開催された Product Manager Conference 2017 に単独で参加してきました。
机ありの良席を確保できました。
Product Manager Conferenceとは?
日本におけるプロダクトマネジメント に関わる人やそれを目指す人が集うカンファレンスです。
プロダクトマネージャーという職種の認知を高め、プロダクトマネジメント 業務に携わる人々が共に学ぶ場を持つきっかけを提供することを目的に、昨年から開催されています。
プロダクトマネージャーという職種は、特にこの1~2年で国内における認知度が広がってきたような気がします。
今回のカンファレンスも、公開数日で定員300名が埋まり、150名以上がキャンセル待ち状態(!) に。
急遽定員が400名まで拡大されたということからも、プロダクトマネージャーへの興味関心・注目度が高まっていることを実感できます。
カンファレンスのテーマ
前回は「さぁはじめよう!日本のプロダクトマネジメント 」というテーマだったのに対し、今回のテーマは「深める、広げる」 。テーマの変遷からも、この1年で国内におけるプロダクトマネジメント の進化を読み取ることができます。
テーマの通り、単純な事例紹介に留まらず、組織文化・チームビルディング・UXリサーチ・経営者目線・人工知能 やブロックチェーン との向き合い方など、多岐にわたるセッションが開催されました。
twitter 上でも賞賛の声が多かった当カンファレンスですが、本当に学び・気付きがたくさんあり、個人的にも大満足の2日間でした。
当日のツイートまとめはこちら。
togetter.com
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個人的に良かったと思う2つのセッション
素晴らしいセッションばかりだったのですが、その中でも特に印象深かったセッションを2つ紹介したいと思います。
前半:VCから見た良いプロダクトについて
(登壇者:セールスフォース・ベンチャーズ 日本代表/浅田慎二 氏)
ポイントとして以下3点を挙げられていました。
どのユーザーのどういうPain を対象にしているかがクリアである
ユーザーPainのストーリー が描けており、それに適合したSolution になっている
(一部のコアユーザーにとって)Must Have になっている
特に3点目については、「UIが優れていることがベストだが、仮にデザインがイマイチでも、ユーザーのPainを解決していれば良い」 とのことで、個人的に非常に共感したポイントでした。
プロダクトマネージャーとしては、どうしても「見た目が良いプロダクトを作りたい」「UIにこだわりたい」という思いが強くなりがちですが、それが強くなりすぎるとプロダクトの本質を見失ってしまいますね。
また、プロダクトに取り組む際の3大原則として
Make it Simple
Release it Quickly
Ask Users
を挙げられていました。よく言われることと言ってしまえばそれまでですが、年間1,000社以上を見ているVCが改めて強調するほどに重要なことなんだと再認識しました。
後半:USでの開発プロセス や開発チームの役割について
(登壇者:米国セールスフォースドットコム プロダクトマネージメントディレクター/Ken Wakamatsu 氏)
「優れたビジネスの背景には優れたプロダクトマネジメント あり」と嫌でも思い知らされるくらい、相当に成熟したプロダクトマネジメント 文化が存在していることが分かりました。
イノベーション はダイエットや筋トレと同じで、プランとメソッドが大事
独立してやらない。会社全体で同じプランを実行する
V2MOM=組織内の意思統一をするプラン
Vision :ビジョン(目標は何か)
Values:価値(なぜ重要なのか)
Method:方法(どうやって実現するのか)
Obstacles:障害(成功を妨げる課題は何か)
Measures:測定基準(パフォーマンスをどう測定するか)
ADAM(Adaptive Delivery Methodology)
ADAMの何がすごいかというと、5~10名程度の計400以上の開発チームが、同じサイクルで年3回のリリースを実現している(!) ということです。
1チームのリリースでも大変なことなのに、400チームって。。。
そして、このADAMは次の7つの規律によって構成されているとのこと。目新しいものはないですが、これが徹底されているからこそ、上記が実現できているのですね。いや、本当にすごい。
Respect People
Eliminate waste
Build quality in
Deliver fast
Create knowledge
Optimize the whole
Just in time decisions
その他にも、
DesignのFail fast:開発中に次のリリースを並行でプランニング開始(デザインとプロトタイプのチーム)
ApprovalのFail fast:リリース毎に機能を更新、スケジュールをエグゼクティブにプレゼン。月に1回、役員が全製品の進歩をレビュー。
Trust が最も重要:最初から高いクオリティを維持する
リリースの最後にクオリティを管理するのではなく、毎日クオリティを下げない
クオリティは製品のパフォーマンス
テストプラン、オートメーション化、コードレビュー、などの品質管理やテストは日々行われる。
アジャイル 開発にはオートメーション化が最も重要
スプリント毎に行われるフィードバックを伝える反省会も重要
などなど。(オートメーションには相当の時間とお金を使っている、とのことでした。)
セッション終了後に軽く凹んでしまうくらい、内容の濃さに圧倒されました。
ちなみに、セールスフォースではエンジニアが働きやすい環境を作っており、その一つに「木曜日はエンジニアとmtg をしてはいけない」 というのがあるそうです。エンジニアは出社もしなくて良いとのこと。
ただ、コードのチェックインは木曜日が最も多く、テストのfailが最も少ないのは金曜日 とのことでした。顔を合わせない方が仕事が捗る、という事実はプロダクトマネージャーとしては少し複雑な気持ちになりましたが、、、エンジニアが集中できる環境を整えることも大事だということですね。
プロダクトマネージャーに経営者が期待するもの
(登壇者:株式会社フリークアウト・ホールディングス代表取締役 社長/佐藤祐介 氏)
プロダクトマネージャー本人ではなく、経営者から見たプロダクトマネージャーに関する講演でした。
プロダクトマネージャーに求めるものとして、「(高い次元でプロダクトマーケットフィットを実現するという前提で)プロダクトバリューの変化を厭わないこと 」を挙げられていました。
「一貫したプロダクトバリュー」 というのは、一部の特殊ケースを除き幻想・嘘 である。
持続的価値を持ち続けるプロダクトバリューの条件は、市場選定や市場ポジションによるもの で、これはプロダクトマネージャーにはどうしようもない 。
プロダクトマネージャーが向き合うべき事実は、Google ・Apple ・Facebook ・Amazon ・Microsoft 以外のソフトウェア製品は、常に大きな変化に晒されているということ。技術・市場・ユーザーの変化に合わせて柔軟に変化し、サバイブし続けることが重要 。
プロダクトマネージャーからするととても刺激的な表現が満載ですが、「最重要はプロダクト・サービスが継続すること」 と思っている自分にとっては、耳が痛くも非常に納得感がありました。
また、こういった話はプロダクトマネージャーだけで集まっているとなかなか出てこないようにも思うので、当カンファレンスのテーマ「深める・広げる」をまさに体現するような、有意義なセッションだったと思います。
番外編:プロダクトマネージャーの採用と育成
(登壇者:Google inc. Product Manager/Bryan Cheng氏 & Capella Yee氏)
2つと言ったのに、3つ目を番外編として紹介してしまいます。
Google のお二方が、APM (Associate Product Manager)という新卒社員向けの育成プログラムについて講演されました。
APM とは、あのマリッサ・メイヤー によって作られた「Google にとって最高のプロダクトマネージャー」を育成するプログラム で、もう15年以上も続いているとのこと。
登壇したお二方は相当に謙遜されて話していましたが、私を含め参加者の多くは「超狭き門を潜り抜けたスーパーエリートに、膨大な時間とお金を投資して理想的なプロダクトマネージャーを会社として本気で育成している」と理解したようです。
全体を通じて感じたこと
色んなことを学び感じた2日間でしたが、次の2点が最も強く感じたことです。
プロダクトマネジメント とは、小手先のスキルやhow toではなく、組織の文化・思想・哲学である
セールスフォースやGoogle の成功の裏には、長い時間をかけて蓄積され、浸透し、また改善されてきた強固なプロダクト文化があるということを痛感しました。経営レイヤーまでプロダクトに対して深くコミットしている点や、10年以上続いているプロダクトマネージャー育成プログラムの存在がそれを物語っています。また、他の登壇者様も、それぞれ「自社におけるプロダクト文化」を発表されていたという印象がありました。
そういった文化・思想・哲学を醸成したり組織に根付かせるように働きかけること、またそれらが組織において健全に体現されている状況を実現することが、プロダクトマネージャーの真の仕事 なのかなと思いました。
そう考えると、「教科書的なプロダクトマネージャー像というものはなく、組織によって様々である」と言われるのにも納得がいきますね。
プロダクトマネージャーに必要なのは、コミュニケーション能力
教科書的なものはないという一方で、ほとんどの登壇者が共通して言っていたのが「プロダクトマネージャーに必要なのはコミュニケーション能力」ということ。それは、面白いことが言えるとか口が巧いということではなく、プロダクトに携わる様々なステークホルダー を巻き込み、文化・思想・哲学を体現していくこと 、なんだと思います。
自分にそんな大層なコミュニケーション能力が備わっているとは思えませんが、特に「医療」という社会貢献度が高い領域において、エンジニアやデザイナーとともにプロダクトを作り、成長させ、顧客に価値を届けることが心底楽しいことだけは確かです。
最後に
プロダクトマネージャーカンファレンスは来年も引き続き開催されるようなので、個人的には絶対に参加しようと思っています。また、次回はAskDoctorsチームのエンジニアやデザイナーを巻き込もうと思っています。CTOも誘っちゃう。プロダクトマネジメント = プロダクトマネージャーだけのもの、ではなく、組織の文化 だと思うからです。
カンファレンスを通じて学んだことを日々の業務に活かしながら、周囲にいる仲間を少しずつ巻き込み、エムスリー流のプロダクト文化を作っていきたいと思います。
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